松本清張ドラマSP『疑惑』の原作のあらすじの結末をネタバレ!希代の毒婦は罪を犯したのか?

2019年2月3日(日)に、松本清張ドラマスペシャル『疑惑』が放送されます(夜9時~)。

黒木華さんが保険金殺人の疑惑がある悪女役を、米倉涼子さんがその悪女を弁護する弁護士役を演じます。

当記事では、ABCテレビで放送の『松本清張ドラマスペシャル“疑惑”』原作のあらすじの結末をネタバレしてまとめています。


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『松本清張ドラマスペシャル“疑惑”』の原作



『松本清張ドラマスペシャル“疑惑”』の原作は、松本清張氏による同名小説。

『オール讀物』(1982年2月号)に『昇る足音』の題で掲載され(掲載時の挿絵は濱野彰親)、改題の上、同年3月に中編集『疑惑』の表題作として、文藝春秋から発刊されました。

今までに1度の映画化、4度のドラマ化がされている人気作品です。


雨の港で海中に転落した車。

妻は助かり、夫は死亡。

妻の名は鬼塚球磨子(おにづか・くまこ)。

記者・秋谷茂一(あきたに・もいち)は、彼女の生い立ち、前科、夫にかかっていた高額な保険金についてセンセーショナルに書きたてます。

そこへ現れたのが、孤軍奮闘する国選弁護人・佐原卓吉。

球磨子は殺人犯なのか?

その結末は?

スペシャルドラマ『疑惑』の原作との違い



SPドラマ『疑惑』と原作小説の大きな違いは、3つ。

➀鬼塚球磨子の弁護士が女性(米倉涼子)であること。

男性から女性に設定を変えたことでどんな変化が生まれるのか、楽しみです。


➁原作の鬼塚球磨子は大柄でグラマーな女性ですが、ドラマでは小柄な黒木華さんが演じます。

妖艶な魔性については、原作に負けていません。


➂保険金の金額が違う。

原作では保険金の金額は3億円ですが、ドラマでは13億円。

スペシャルドラマ『疑惑』の主な登場人物

スペシャルドラマ『疑惑』の主な登場人物を紹介します。

佐原卓子(さはら・たかこ):米倉涼子(よねくら・りょうこ)



民事専門の有能な弁護士。

冷静かつフラットなスタンスで、事件や依頼人と向き合います。

原作では佐原卓吉という男性弁護士。


白河球磨子(しらかわ・くまこ):黒木華(くろき・はる)



※左が黒木華さん。

熱海の老舗レストラン「梅花楼」の社長・白河福太郎の後妻。

傷害や暴行、恐喝で4つの前科があります。

福太郎と一緒にドライブしていたところ、車が絶壁から海へ落下。

福太郎だけが溺死したため、「生命保険金を狙って、夫を故意に死なせた」との疑惑が世間に広まり、“稀代の悪女”のように言われることに。

感情や態度がコロコロ変わるヒステリックな性格で理解不能ですが、妙な魅力があり、関わる人間(特に男たち)を次々と翻弄。


秋谷茂一(あきたに・もいち):板尾創路(いたお・いつじ)


ゴシップ記者。

世間に注目される白河球磨子の生い立ちを執拗に取材し、本まで出した、食えない男。

スペシャルドラマ『疑惑』の原作のあらすじの結末をネタバレ



SPドラマ『疑惑』原作のあらすじをネタバレしていきます。

3億円保険金殺人事件


資産家・白河福太郎(中村梅雀)が急死しました。

福太郎は親譲りの山林と、耕作地と、ほかに貸しビルひとつ。

その資産は2億円と評価されています。


鬼塚球磨子(黒木華)が福太郎の後妻になってから半年後に、乗用車の海中転落事故が発生。

目撃証言によると、運転していたのは球磨子で、助手席が福太郎。

球磨子だけが脱出し、福太郎は海底の車内で溺死。


球磨子は、入籍した翌月には福太郎に三億円の保険金をかけていました。

つまり、福太郎が死ぬことによって、その遺産の半分である約1億円を妻の権利で取り、3億円の保険金とあわせて4億円を取得。


検察は鬼塚球磨子が、3億円の保険金詐欺の目的で、亭主の福太郎を乗せた自家用車を運転して、車ごと海に飛び込み、彼女だけが水中で車から脱出したと見ています。

球磨子には詐欺、恐喝、障害など前科4犯があったのです。


しかし球磨子は全面否定をつづけており、運転席が福太郎で、自分は助手席にいたと主張(目撃証言と真逆)。

そして物証はなく状況証拠だけなので、検察当局は苦悩の色を隠せない状態。


球磨子は検事はもとより自分の弁護人にもかみつき、裁判官をあざけり、証人を罵ります。

そんな調子だから、裁判官の心証も最悪です。


3億円保険金殺人事件の概要(球磨子の供述)



事件の通報者は、球磨子でした。

球磨子の供述によると、事件当日、球磨子は朝から福太郎を誘って新潟県の弥彦神社へドライブに行きました。

運転は往路が球磨子、帰路が福太郎だったという(検察の見解とは真逆)。


どうして帰路の運転を福太郎と球磨子がときどき交替しなかったかという問いに、球磨子はビールを飲んで酔っていたからだという。

年を取った福太郎は、運転に疲れていました。


フロントガラスには雨が流れていて内側が曇るために視界がきかず、福太郎は何度もガラスをふいてくれと言いましたが、結局距離の目測を誤り、時速40キロで車はそのまま岸壁に向かって直進し、海中ジャンプしたと球磨子は述べました。

警察は球磨子の言を信用しませんでした。

あくまで球磨子が運転して、福太郎は助手席に座っていたと断定。


したがって車内から出てきたスパナ(運転席の下にあった)は、球磨子が社内から脱出する際にフロントガラスを叩き割るのに使用したとして、これを物的証拠に。

物的証拠といえば、このスパナが唯一のものでした。


しかしその後、検証を行った結果、スパナを使用するまでもなく、車のフロントガラスが粉々に割れることが判明。

こうなると唯一の物的証拠も宙に浮く格好になります。


検察側が、車の転落を球磨子の計画的犯行と断定する大きな理由のひとつは、福太郎に3億円に保険金をかけていた事実からです。

けれども、球磨子は、保険の加入は偶然に過ぎず、今回の事故とは何の関係もないと主張。


鬼熊事件


検察が球磨子を疑う理由のひとつが、その恐ろしい姓。

鬼塚球磨子を縮めると「オニクマ」になるのです。


鬼熊事件は大正15年に起こった事件で、千葉県の岩淵熊次郎が、自分を裏切った女とその母親とを殺し、木小屋に行って火をつけ、そこで恋敵の男を殺して逃げましたが、その逃走中にも巡査2人を軌って1人を死なせた事件。

千葉県警は総力をあげて「山狩り」を行いましたが、熊次郎は山中を転々として捕まりませんでした。


東京の新聞は、熊次郎を「鬼熊」と呼んで、連日書きたてました。

鬼塚球磨子は、名前のせいで随分損をしていることになります(^_^;)


被疑者・鬼塚球磨子は、北陸一の毒婦?



北陸日日新聞の社会部記者・秋谷茂一(板尾創路)は、鬼塚球磨子の生い立ち、前科、夫にかかっていた保険金などについてセンセーショナルに書きたてます。

その記事の内容とは……

鬼塚球磨子は熊本県天草の小さな商屋に、一男六女のうちの五女として生まれた。

家業が忙しいうえに兄弟も多かったので、両親は球磨子にかまうことが出来なかった。


やがて球磨子は2歳にもならぬうちに養女にもらわれて、県下のK町に移ることに。

K町で鉄工所を経営する鬼塚夫婦には他に子供がいなかったため、球磨子は甘やかされて自由に育った。


地元の中学に通う頃には、どことなく華やかな感じが目立つ子になっていた。

その人目をひく派手さは高校に進むと一挙に花開いたようになって、隣町の男子高校生と付き合っているという噂も。

学校では禁じられているのに、鞄に化粧品をしのばせていて、時々化粧して登校。


しかし球磨子は、突然高校を中退。

まわりにはスチュワーデスになると言ったが、彼女が身を寄せたのは、長姉の夫の妹という女性が博多で経営するBARだった。


遊びにきている子なのかホステスなのかはっきりしない身分のまま店に顔を出すうちに、博多の老舗割烹の跡取り息子・Mさんと深い仲に。

2人は駆け落ちして一緒になるが、いつしか両親のあきらめにも似た黙認によって市内に一戸建ての家を構えた。


絵に描いたように幸福な若夫婦の家庭と見られていたが、球磨子は突然その本性を表す。

ホステス時代の客で興行師の豊崎勝雄とばったり出会い、関係を持ったのである。


間もなくMさんに豊崎のことがバレて、口論に。

その後追尾したMさんによって、豊崎宅での密会現場に踏み込まれ、これを機に別居。

ところが球磨子はひるむどころか、夫の財産の半分は妻に権利があると主張。

「別れたいから、家を自分にほしい」と申し入れたが、Mさんは断った。


球磨子は豊崎と共謀して、Mさんを騙して脅して脅迫して、家を奪い取った。

離婚を果たした球磨子は、手に入れた家を売り払って、豊崎と連れ立って九州を後にして、東京・銀座裏にクラブを開店。


しかし球磨子は、たちまち経営に行き詰まる。

焦った球磨子は高利の金に手を出し、ツケはたちまち廻ってきた。

ホステスたちの尻を叩いて客と関係させ、弱みをつかんだとばかりに高い金を要求。

そのことで「恐喝まがいじゃないか」と客は次々に去っていった。


球磨子は企業のトップたちに色仕掛けで接近、自分のクラブの法人会員になってもらい、年間100~150万の会費を取る商法も展開したが、これとて膨れ上がる金利を埋めるには遠く及ばなかった。

球磨子は、ドレスや装身具を買ってもお金を払わなくなった。

さすがに見切りをつけたのか、愛人の豊崎も去っていった。


球磨子は、ついに不渡り手形を出し、銀行取引停止の処分を受ける。

そしてその夜、球磨子は傷害事件を起こした。


球磨子の店には、かつて副ママ格のⅠ子さんがいた。

Ⅰ子さんが自分を裏切って自分の悪口を銀座中に触れ回り、ホステスの“大量脱走”のリーダーを務めたと思い込んだ球磨子は、店の用心棒のヤクザと一緒にI子さんのマンションを急襲。

殴る蹴るの暴行を加えた末、ライターでI子さんの顔面を焼いた。


は懲役三年の実刑判決を受け、M刑務所で服役。

やがて球磨子は銀座のバーを転々とし、新宿の歌舞伎町のバーへ。

このとき土地のヤクザと繋がりが出来て、彼女の方が姉御格で若いヤクザを顎で使った。

そのヤクザとは、新宿の暴力団「黒駒一家」の組員・河崎三郎と野島秀夫の2人。


そんな中、球磨子は白河福太郎と出会う。

球磨子は普段はそうでもないが、化粧をすると見違えるように妖艶になる。

福太郎が北陸の財産家と知った球磨子に欲心が起こり、福太郎は球磨子にのぼせあがった。

球磨子が新宿の暴力団と繋がっているとも知らずに。


球磨子は白河家に入り込み、福太郎との婚姻届けを提出(これが事件の起こる半年前)。

そして3億円の保険金の契約を結んだ。


ところが孫の中学1年生の宗治くんが球磨子を嫌って、死んだ母親の実家に戻ってしまう。

さらに下の妹2人も兄について一緒に家を出た。

亡妻の実家でも憤慨して、福太郎と絶縁した。


そこへ起きたのが「3億円保険金殺人事件」だ。

罪を犯しては刑務所に入り、出てきては罪を犯す。


この“魔の輪廻”を繰り返す粗暴にして冷血な“北陸一の毒婦”を許していいものなのか。

市民社会がその社会正義と平和を守りうるかどうか、今やわれわれ自身が問われているのである。

以上が秋谷の書いた記事ですが、秋谷は自分の書いた記事を読んで沈んだ気持ちに。

もとより一般読者の興味をそそるように書いた記事ですが、それにしてもわれながら誇張の強い、浮き上がった文章です(^_^;)


球磨子の前科を暴きたて、これでもかとこれでもかと徹底的に叩いています。

まだ審議が継続中だというのに、紙面で夫殺しの判決を彼女に与えています(まるで検察を支持するかのような内容)。


「もし球磨子が無罪になったら、どうなるだろうか」と思う秋谷。

彼女から名誉棄損の訴えを起こされるのは間違いないし、それどころか彼女の“異常な性格”からして“お礼参り”の報復手段に訴えてくる可能性も……!

秋谷は、身震いしました。


民事専門の弁護士・佐原



球磨子の弁護は、ベテラン弁護士・原山正雄(津川雅彦)が担当。

原山は球磨子の無実を信じていて、検察とズブズブの関係の記者・秋谷の誇張した記事を快く思っていません。


球磨子は、原山の言い方が少しでも気に食わないと逆上することも(ヒステリックな性格)。

球磨子は自分が絶対的に無罪と確信しているので、今では原山が差し入れた六法全書で法律を勉強しています。

原山は「自分が弁護を下りたら球磨子はどうなってしまうのか」と案じていましたが、遂に病に倒れます。


ドラマでは「原山は、白河球磨子の弁護を佐原卓子に託す」とありますが、原作では日本で屈指の刑事専門弁護士・岡村に託そうとします。

しかし岡村は球磨子の弁護を引き受けませんでした。


そして遂に、国選弁護人・佐原卓子(米倉涼子)弁護士が球磨子の弁護をすることに決まります(原作では卓子ではなく、卓吉)。

佐原は民事を専門とする弁護士でした。

秋谷が取材に行くと、「そうですな、苦しい弁護になりそうですね。なにしろ鬼塚被告はマスコミにさかんに喧伝されて、強烈なイメージが一般に出来上がっていますからね」と佐原。


球磨子は佐原の顔を見るなり「お前もわたしが犯ったと思ってるんだろう?」と叫んで睨みつけます。

佐原は度肝を抜かれる一方、球磨子が絶対的に無罪を確信していることに気が付きます。

佐原は、球磨子が本当に犯罪を犯していないと思えてきました。


スパナと脱げた靴の謎


佐原は「2つ気になることがある」と秋谷に言います。

それは……

  • 球磨子がなぜスパナを運転席の下に置いたのか
  • 福太郎の靴がなぜ右足だけ脱げていたのか


佐原が気になる1つ目は、球磨子がなぜスパナを運転席の下に置いたのか。

スパナは修理道具なので、普通は車のトランクに入っているはず。

球磨子が車のフロントガラスを割るつもりだったとしても、なぜ金槌を用意しなかったのか?(金槌で割る方が確実)。

(どちらにしても、車のフロントガラスはスパナで割らなくても水圧で勝手に割れることがわかったので、スパナは物的証拠にはならず単なる状況証拠)。

佐原がスパナのことを球磨子に聞くと、球磨子は「福太郎がどうしてスパナを車内に持ち込んだのかまったく知らなかった」と返答。


佐原が気になる2つ目は、福太郎の右足から脱げた靴。

福太郎の左足は靴をちゃんと履いていたのに、なぜ脱げたしまったのか?

秋谷は「それは車が転落したときのショックからですよ、右足の方に強い衝撃を受けたのでしょう。福太郎さんの右足の靴は少しゆるくなっていたんじゃないですか」と言いますが、佐原は納得していません。


秋谷は、検察も前の弁護士・原山も見落としていた2つの事項にいち早く目をつけた佐原を、案外有能なのかもしれないと思うのでした。


佐原は「完全無罪」を勝ち取りたい


公判は回を重ねていきました。


検察側の証人・河崎三郎(東京・新宿の「黒駒一家」の組員)に対する佐原弁護人の反対尋問。

河崎は、球磨子が福太郎と婚姻して新宿と去る時に「こんどは思いきった仕事をして大金持ちになって帰ってくる」と言ったことを証言。

河崎はこの球磨子の発言から、大金持ちの白河の財産を取得する目的で結婚するという意味に解釈しました。


佐原:「被告が白河さんの財産を目的に結婚したというのは、あなたの想像ですね」

河崎:「そう言われてみたらそうです。はっきりと彼女から聞いたわけではありません」

佐原:「被告は、白河さんと結婚したら生命保険をかけると言いましたか」

河崎:「言っていません」


次に検察側の証人・野島英夫(東京・新宿の「黒駒一家」の組員)に対する佐原弁護士の反対尋問。

内容は、河崎に対するのと同じ。


次に検察側の証人・木下保(白川福太郎の友人)に対する佐原弁護士の反対尋問。

木下によると、福太郎は球磨子と結婚して4か月後に、「球磨子と夫婦になったのは間違いだった。あの女は強欲でヒステリーだ。しかも背後には新宿のヤクザがついているらしい」と悩んでいたという。

そこで木下は「慰謝料を渡して球磨子と別れたらいいじゃないか」とアドバイス。

福太郎は「あの女は1億円ぐらい出さないと別れてくれないだろう。が、俺にはそんな余裕はない。しかし近いうちに方法をみつけて別れる。だが、いまあいつと離別しようとしたら、あいつに殺されるのを覚悟しなければならない」と答えたそうです。


佐原:「福太郎が球磨子に殺されるとはどういうことか、具体的に聞きましたか?」

木下:「いいえ、福太郎は具体的には言いませんでした」

佐原:「殺すとか殺さないとかいう言葉は、日常の軽い冗談にも使われます。白河福太郎があなたに“あいつに殺されるのを覚悟しなければならない”と言ったのは、なんら根拠のない、白河福太郎の軽口と考えられますが、どうですか」

木下:「そう言われてみると、深い意味の言葉ではなかったと思います」


最後に、検察側の証人・藤原好郎に対する佐原弁護士の尋問。

藤原は事件現場が見える電話ボックスの中から、福太郎と球磨子が乗った車が崖から落ちるところを目撃した証人です。

藤原は助手席に座っていたのは男性で間違いないと言っていますが、事件当日は激しい雨が降っていました。


佐原:「あなたは電話口の会話に耳を傾けていました。そのために通過する車の助手席の人間を一度は目撃したものの、注意力が集中せず、いわば上の空で見たという程度ではありませんか」

藤原:「言われてみれば、そういう点はあります」

佐原:「あなたは転落事故について新聞を読みましたか」

藤原:「読みました」

佐原:「あなたは、球磨子が運転し、死亡した福太郎が助手席にいたという推定の記事を読みましたか」

藤原:「読みました」

佐原:「あなたはそれらの記事の影響で、助手席にいたのが男性のようだったという印象になったのではないですか」

藤原:「そういう一面があることを否定しません」


こうして佐原は、検察側の証人に対する反対尋問で「証言」という堅城を次々と突き崩すことに成功しました。

鬼塚裁判における状況証拠は検察側の唯一の武器だったにもかかわらず、その曖昧さがえぐり出されてしまったのです。

「もしかすると、球磨子は無罪になるかもしれない」と思う秋谷。


秋谷が「先生、鬼塚被告は無罪になりそうですか?」と聞くと、「そういう方向に努力します。しかし、わたしとしては、証拠不十分という消極的な無罪ではなく、より積極的な証明を提出して、完全無罪を勝ち取りたいですね」と佐原。

佐原は、スパナと靴のことをまだ気にしています。


球磨子が無罪になったら必ず自分の家族に報復するに違いないと怯える秋谷は、佐原を鬼塚裁判から引きずり降ろさなければならないと思い詰めていました。


衝撃の結末


佐原は、とうとう白河福太郎の死の真相に辿り着きました。

秋谷を呼んで、自分の推理を話します。


佐原によると、白河福太郎は自殺。

運転席にいたのが福太郎で、助手席が球磨子。


福太郎は前から自殺を計画していたのではなく、球磨子と一緒に新潟県の弥彦神社にドライブして、その帰りににわかに決行を思いついたのです。


球磨子は自分が往路を運転した時には、車内にスパナを見かけなかったと言いました。

それは本当のことで、福太郎が帰路を運転している時に、後部トランクからスパナを出して運転席の下に隠しておいたのです。


そんなことをしたら助手席の球磨子に気付かれそうなものですが、そのとき福太郎は球磨子をドライブインに残して一足先に車に戻って、スパナを取り出して運転席の下に置いたのです。

あとで車に戻った球磨子は、スパナに気づくことが出来ませんでした。


福太郎の自殺の動機は、球磨子と結婚したことで孫にまで背かれた孤独感。

そこに球磨子の悪女ぶりも明らかになってきたので、福太郎はまさに追い詰められて絶望を感じていたのです。


そんなことから福太郎は、急に自殺を決意。

それには助手席にいる球磨子への仕返しの意味もあったと思われます。

仕返しとは、憎むべき相手の球磨子を死の道連れにすること。

保険金の受取人の球磨子を死なせて、保険金を受け取れなくするため。


福太郎の靴は、衝撃で脱げたわけではありませんでした。

福太郎はいざという時に、自分が本能的にブレーキを踏むことを恐れて、ペダルの下に靴とスパナを押し込んだのです(だから右の靴は最初から脱げていた)。


しかし福太郎がスパナや靴をブレーキの下に押し込もうとモソモソ動けば、助手席の球磨子に気付かれそうなものです。

しかし福太郎は球磨子に何度も車のフロントガラスをふかせることによって、球磨子に気付かれずにスパナと靴をブレーキの下に入れられたのです。


秋谷が「先生は、この推理を法廷で話されますか?」と聞くと「靴とスパナを法廷に持ち出し、実験して立証するつもりです。悪女でも、無実に被告に変わりはありません。私は彼女を救い出しますよ」と佐原。

その3日後、秋谷が太い鉄パイプで佐原を襲いました。

(FIN)

2019年度版ドラマ『疑惑』の結末

2019年度版ドラマ『疑惑』の結末は……

  • 球磨子は無罪。
  • まさかの百合エンド。
  • 佐原(米倉涼子)が本当に球磨子の無実を信じていたかが分からないラスト。

原作の「秋谷が太い鉄パイプで佐原を襲った」ラストではなく、どこか曖昧さを残したラストでした。

結局、佐原は球磨子の魅力に取りつかれてしまったのかな?という見方も。

まとめ

スペシャルドラマ『疑惑』のあらすじを原作ネタバレしてまとめました。

ぞっとするような結末ですが、原作が書かれたのが約40年前なのでドラマではまた違った展開になるかもしれません。


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