テレビ東京開局55周年特別企画ドラマスペシャル『Aではない君と』が、2018年9月21日(金)(テレビ東京系:21:00~23:18)に放送されます。
加害者となった息子と、向き合う父親を描いたヒューマンドラマです。
愛猫・ペロを可愛がる心優しい少年(杉田雷麟)が、同級生を殺害した衝撃の理由とは?
当記事ではスペシャルドラマ『Aではない君と』原作小説のあらすじのネタバレ・後編をまとめています。
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『Aではない君と』原作あらすじをネタバレ・後編
何故、翼は嘘を付くのか
ペロの眠る場所を聞いた時の翼の言動に激しい衝撃を受けた吉永(佐藤浩市)は、部屋に帰ると、ソファに倒れ込みました。
そして翼(杉田雷麟)が、何故年賀状に『一か月前にペロが死にました。拾った場所に埋めてやりました』と嘘を書いたのか考えます。
吉永は昨年の手帖をめくって、5月のページを開きました。
5月の5日の欄に「八景島」、8月22日の欄に「翼と食事」と書いてありました。
吉永は5月5日に翼と八景島に行ってから、8月22日までおよそ3か月半も翼に会っていなかったのです。
吉永が忙しかったから会っていなかったわけではなく、「会わないか?」とメールしても「忙しい」と断り続けられていたのです。
八景島に行ったときは楽しそうだったのに……と思う吉永。
吉永は神崎(天海祐希)に、翼がペロのことで嘘をついていたことを話しました。
翼が「ペロが死んだ日」と「ペロを埋めた場所」について嘘を付いていたことを知って、神崎は驚きます。
「何だか自信がなくなりました」と言う吉永に「自信があったのですか?」と神崎。
「どうしても親子の絆を取り戻したいから頑張られているんじゃないですか」と言われて、うなずく吉永。
太田正人
翌日、吉永と神崎は、翼が通っていた小学校に行きました。
目的は、翼と仲が良かった太田正人の話を聞くため。
太田正人は大人しい子で、翼と同じで6年生で転校してきました。
翼が転校してきてからは、よく話をしていたとのこと。
そして教師が見る限り、翼と優斗は特に仲が良さそうだったとのこと。
優斗は家庭の事情が複雑で、かなりの問題児だったそう。
でも翼が転校してきてからは、おだやかになった様子。
教師は、やっと心許せる友達ができたと安心していたそうです。
吉永と神崎は、太田正人からも話を聞きました。
優斗はクラスのやつらに命令して、正人をシカトさせたり、嫌がらせさせたりしていました。
そんな時に、正人と普通に話をしてくれたのが翼。
当時吉永は、翼から正人のいじめのことを相談されていました。
翼は吉永のアドバイス通り「自分は間違ったことはしていないし、正しいと思ってくれる人がいればそれでいい」と言ったそうです。
そのせいで翼も三ヵ月ぐらいはいじめられていましたが、冬休みに入るちょっと前から優斗と仲良くなったのだそう。
「お互いに親に不満のある者同士仲良くなったんじゃないかな」と正人。
吉永が「翼くんはお父さんのことを憎んでいたのかな?」と聞くと「不満はあっただろうけど憎んではいなかったと思う」と正人。
なぜなら、翼は、ペロを今までお父さんからもらったプレゼントの中で最高のものだって自慢していたから。
吉永はペロを飼う為に、ペットを飼える家に引っ越しまでしたのでした。
正人の話を聞いているうちに、吉永は自分の罪深さを思い知らされました。
それだけ大切にしていたペロが死んだと聞かされても、自分は慰めの言葉ひとつかけてやらなかったのです。
翼は、5月にペロが死んでから別人のように暗くなったとのこと。
正人はたまに会いに行って励ましていましたが、そのうちもう家には来ないでくれと言われてしまいました。
ヒコク
正人は事件の一か月前ぐらいに、翼と優斗が一緒にいるところを目撃していました。
そして優斗は翼のことを「おい、ヒコク」と呼んでいたという。
吉永と神崎は、翼が優斗に「被告」と呼ばれていじめにあっていたのではないか……と思います。
翼はいじめられていた
翌日、吉永は翼に面会して、いじめられていたのかと聞きました。
翼は、とうとう優斗にいじめられていたことを告白。
優斗は翼を「被告」にして、毎日のように裁判ごっこをしていました。
優斗が弁護士で、栗原が裁判官で、久保が検察官で、翼が被告。
翼は必ず有罪になり、罰(スカートをめくらされたり、備品を壊させられたり)を受けていました。
裁判ごっこは去年の6月から、1年にもわたって行われていました。
たとえごっこ遊びでも、翼には弁護士も裁判官も検事も自分の敵だという思いが染みついていたのです。
しかし、翼が話してくれたのはここまででした。
吉永はどうして翼は全てを話してくれないのか、と嘆きます。
優斗に送ったメールの意味や、優斗の携帯の場所をどうして隠す必要がある……?
再捜査開始
吉永は翼がいじめられていたことを、瀬戸(安田顕)に報告。
瀬戸は審判長に話をして、久保と栗原にいじめの事実があったのかということと、優斗の携帯について捜査機関に再捜査の要請をしました。
神崎はいじめの事実を知ると「残酷なことをしますね」と顔をゆがめました。
翼は1年もの間、想像を絶する苦しみにさらされていたに違いありません。
吉永は、優斗の携帯は事件現場に埋めてあるのではないかと推測していました。
事件現場には、優斗がペロのために飾った花と同じ花が咲いていました。
吉永は、ペロは事件現場に埋まっているのではないかと思います。
藤井優斗の携帯の衝撃の動画とは……?
栗原と久保が、翼に対するいじめを認めました。
そして藤井優斗の携帯は、やはり事件現場にありました。
そこには翼が、猫を殺している動画が入っていました。
正確に言うと、猫の首にロープをかけて双方から引っ張っている動画。
映像を撮りながら引っ張っているので、もう一人の人物は写っていませんが、優斗でまちがいないでしょう。
翼は優斗の命令で、大好きだったペロを殺させられたのです……!
これは翼の家で撮影されたもので、翼は泣きながらロープを引っぱっています。
さらに携帯が埋まっていた場所の近くから、大量の動物の骨がみつかりました。
大きさと形状からハムスターではないかと推測。
東村山周辺のペットショップで、優斗と思われる少年が、定期的にハムスターを飼っている姿も目撃されました。
いじめられた理由は、八景島
吉永は、翼に詳しい話を聞きに行きました。
吉永が「優斗くんに脅されて仕方なくペロを殺したんだろう?暴力をふるわれたのか」と聞くと「僕が裏切ったから」と翼。
翼は転校してしばらくは無視されていましたが、ある日優斗の方から話しかけてきました。
誰から聞いたかわからないけど、お母さんと2人で生活しているんだろうって。
離婚した父親と会えなくてさびくないかと聞いてきたので、翼はお父さんのことは忘れるからって答えました。
お父さんにとって僕はもうどうでもいいから、ぼくもそうするって。
すると優斗は「仲間だな」と言って、翼と仲良くしてくれるようになりました。
中学に入ると、栗原と久保という新しい友達もできて、4人で仲良くするように。
でも5月5日に翼が吉永を八景島に遊びに行ったことがバレて、「裏切られた」と優斗。
そして「俺が一番大事なら、ペロを殺せ」と言ったのでした。
優斗はペロを殺した動画を撮って、お父さんに送ると脅し、翼に命令し続けてきたのでした。
裁判ごっこが始まり、懲役刑のときはその場で翌日翼にさせるいたずらを3人で決め、死刑のときは優斗が控訴しますと言って、2人を帰しました。
優斗は死刑になりたくなかったら、ハムスターを殺せと翼に命令。
翼がハムスターの餌を万引きしたのは、なぜ飼ってもいないハムスターの餌を取ったのは吉永に問いただしてほしかったから。
しかし吉永は翼を迎えに行くことも、問いただすこともしませんでした。
翼の必死のSOSに気が付いてやれませんでした。
そして翼は仕方なく、嘘の年賀状を出すことにしたのです。
吉永と瀬戸、神崎の3人で話をする
翼はようやく瀬戸に対しても、事件のことを話すようになりました。
ただ、飼い猫を殺したことを隠すために人を殺したというのは、動機として納得し辛いものがあります。
栗原も久保も、優斗が翼に動物を殺させていたことは知りませんでしたが、いじめに加わっていたことは事実なので、そのことが原因で優斗が亡くなったことを重く受け止めています。
「翼くんの処遇についてはどのようにお考えですか」
神崎が少し身を乗り出して言いました。
瀬戸は、表情に安堵の色を滲ませながら答えました。
「確かに彼には道場できる面が多々あります。ただ、だからと言って、殺人が肯定されるわけはありません。残念ながら、彼の中に自分が犯した罪への反省があるあるようにも思えません。初等少年院への送致が妥当ではないかと考えています。ただし、相当長期との意見を添えようと思っています」
神崎に退出してもらったあと、瀬戸は吉永に聞きました。
「付添人としてではなく保護者としてお聞きします。彼を更生させられますか?」
「二度とあんな真似はさせないよう、父親として息子としっかり向き合っていきます」
瀬戸の「更生というのは二度と罪を犯させないというだけではありませんよ」という言葉は、吉永に重く響きました。
吉永は瀬戸に深々と頭を下げて、部屋を出ました。
神崎が待っていて「逆送は避けられそうですね」と言いました。
でもこれで終わりではありません。
相当長期ということは、二年以上刑務所に入ることになるからです。
少しでも早く戻って来れるようにがんばると言う神崎。
翼は反省していない
吉永が翼に会いにいくと「人を殺したら苦しまなきゃいけないの?」と翼。
翼は、ペロやハムスターを殺した時は苦しかったが、優斗は殺されて当然だから苦しくないと言います。
吉永:「確かに優斗くんはひどいことをしたが、殺されて当然ということはない」
翼:「どうして動物を殺すことは許されるのに、人を殺すことは許されないの?」
吉永:「動物を殺すことだって許されない」
翼:「でも僕が少年審判で裁かれるのはあいつを殺したからでしょう。調査官だって僕が動物を殺したことについては何もいわなかった」
吉永は優斗の父親が悲しんでいると言いますが、「自業自得だよ、あんな酷いことする人間に育ててしまったんだから」と翼。
翼:「ぼくはあいつに心を殺されたんだ。それでも殺しちゃいけなかった?」
吉永:「そうだ……」
翼:「心を殺すのは許されるのに、どうして体を殺しちゃいけないの?」
吉永:「優斗くんが翼にしたことも許されることじゃない。心も、体も、傷つけちゃいけないんだ」
翼:「心と体と、どっちを殺した方が悪いの?」
「ぼくとあいつどっちが悪いの?」と聞く翼は、刃を突き立てるような殺気立った雰囲気でした。
吉永は「お父さんは翼を早く自由にしてやりたい。そのためには反省していることを示さないと」と言いますが、「いいよ、反省なんかしてないし」と翼。
翼には、自分の方が被害者だという意識しかないのです。
翼は自殺するつもりだった?
審判の日を迎えました。
その前に、吉永はすこし翼と話すことを許されました。
吉永は翼に、事件の夜に電話をかけてきたのは、自殺する前に「さよなら」と言うためじゃなかったのか、と聞きます。
翼はバックパックに着替えなんか用意していませんでした。
優斗を殺したあと、ベランダに干してあったスエットに着替えたのです。
吉永は「お前は優斗くんを殺すつもりで呼び出したわけじゃなかったんじゃないのか?お前が見せようとしていたもっとおもしろいものっていうのはおまえの……おまえの最後の……」と言葉に詰まります。
翼が視線を合わせました。
「お前は自殺を考え、別れを言うためにお父さんに連絡したんじゃないのか。もしくは自殺を思いとどまらせる言葉を聞きたかったのかもしれない。だけど、お父さんは出られなかった。これからどうしようと悩んでいる時に優斗くんがやってきて、何らかの争いになって殺してしまった。そうじゃないのか?」
翼が唇を引き結んで、かすかに震えています。
「もし自殺しようとしていたと知ったら、お父さんとお母さんが深く傷つくと思って黙っているんじゃないのか」
翼の荒い鼻息が聞こえました。
「翼は自殺を考えるほど追い詰められていた。それが心を殺されるということなんだろう。お父さんに聞いたよな。心と体とどっちを殺した方が悪いの、と。翼は優斗くんを殺す以前に、自分はすでに殺されていたと言いたかったんじゃないのか」
頑なに閉じられていた翼の口が開き、口を開いたり閉じたりしています。
吉永が「お前は悪くない」と言うと、翼が口を開いたまま制止しました。
吉永が「翼が生きていてくれて良かった。審判の最後の方で翼が話をできる時間があるから、あの夜何があったのか話すんだ」と言うと、翼はゆっくりと口を閉じて顔を伏せました。
審判が始まりました。
翼は現場での優斗との会話や、なぜ殺す直前に吉永に電話したかを聞かれても「わかりません」や「忘れました」と返答。
吉永は落胆のため、息を飲み込みました。
どうして本当のことを話してくれないんだ……。
審判長が、夫婦のどちらが翼くんを引き取るのかと聞くと「私が引き取ります」と吉永。
その後も、翼は誰に何を質問されても、黙っていました。
調査官である瀬戸の発言が終わり「それでは最後に青葉くんから言いたいことは……」と審判長。
その時、吉永は「付添人として、私から意見を述べさせてもらうことはできますか」と手を上げました。
吉永は翼に、以下の3つの質問をしました。
- バックパックに前もって着替えを用意していなかったことから、優斗を殺す意思はなかったのではないか?
- 自殺しようとしていて、それを止めてほしくて吉永に電話したのではないか?
- 翼が優斗にメールした「おもしろいもの」とは、自殺する翼だったのではないか?
翼はじっとこちらを見たまま、何も言いません。
審判長も「君は自殺しようとしていたのかな」と質問しますが、「答えたくありません」と翼。
吉永は翼に死んで欲しくないという思いから、「ペロと過ごした10年間を思い出して欲しい。その猫を失った時、君がどんな気持ちになったのか思いだしてほしい。命について考えてほしい」と言いました。
翼の処分が決定
審判長が、翼の処分を発表しました。
相当長期(だいたい2年)の少年院行きでした。
こうして、翼の少年審判は終わりました。
神崎は、吉永に話しかけました。
神崎:「翼くんが自殺を考えていたとは驚きましたが、どうして認めなかったんでしょうね」
吉永:「わたしたちにこれ以上、辛い思いをさせたくなかったのではないでしょうか」
吉永に、山本と名乗る人物が話しかけてきました。
山本は、優斗の父・藤井智康(仲村トオル)の代理人として、少年審判に出席していました。
山本によると、智康は吉永とふたりきりで会いたいのだそう。
優斗の父・藤井智康の家へ
吉永は、藤井智康(仲村トオル)の家に、ひとりで訪問。
智康は、吉永が翼の付添人になったことも、代理人から聞いた少年審判の様子もショックだと言いました。
そして「優斗は殺されなければならないほど悪い人間じゃない」と唇を噛みしめます。
智康は損害賠償を起こさないかわりに、吉永に以下の2つの約束をさせました。
- 優斗が翼にしたこと(いじめ)を公表しないで欲しい。
- いつか翼が本当に更生した姿を見せて欲しい。
4年後
4年後、吉永は甲府で現場の仕事についていました。
一昨年の10月、父・克彦(山崎努)が死亡。
心筋梗塞で倒れ、3か月ほど入院したあとに他界しました。
吉永は見舞いに4回行きましたが、死に目にはあえませんでした。
入院中の克彦は、翼に会いたがっていましたが、翼は純子と一緒に大阪で暮らしていると言っておきました。
少年院を出た翼に、おじいちゃんの見舞いに行こうと誘ってみましたが、答えはNO。
おじいちゃんは事件のことは知らないからと説得しても、翼の気持ちが変わることはありませんでした。
そして今日やっと、翼を連れて墓参りに来ることが出来たのです。
翼は居酒屋で正社員として働くようになっていました。
翼の少年院生活と、出院後
翼は長期処遇で、2年間、栃木の少年院にいました。
吉永と純子は、その2年間、交互に翼の面会へ。
吉永が危惧していた自傷や自殺などの問題はなく、翼は模範的な生徒だったよう。
しかし、翼の被害者への贖罪の気持ちが深まっているかについては、疑問が残ると、出院直前に担当教官から言われました。
翼は少年院で、ロールレタリング(ひとりの人間が「自分」と「相手」の一人二役を演じながら、往復書簡のやり取りを繰り返す)をしていました。
翼が優斗や智康にあてた手紙には反省の気持ちが書かれてないのはおろか、2人のせいで人生を台無しにされたという恨み言が書き綴られていました。
往復書簡を繰り返すうちに、彼らに対する翼の恨み言は減っていきましたが、かといって贖罪の気持ちが深まっている言葉もありませんでした。
翼は16歳になり、少年院で中学卒業の資格を得ていました。
しかし、出院後の進路を決めるのは困難でした。
富士宮は翼のことを知る者はいないけれど、いつ何時、事件のことを知られてしまうかわかりません。
そもそも、翼の入学を認めてくれる高校があるのかもわかりません。
吉永は通信教育で、高等学校卒業程度認定試験を取ることを勧めました。
吉永の仕事は庶務でしたが、仕事が終わるとまっすぐ家に帰り、できるだけ翼と一緒にいられる時間を持つように努めました。
しかし、翼と2人の時間は、息苦しいものでした。
事件を想起させるニュースやドラマに触れるのを恐れ、持っていたテレビを捨てました。
静まりかえったダイニングで向かい合い、買ってきた弁当や総菜で夕食を取りました。
翼はいつも夕食を半分食べると、「勉強してくる」と言って自室へ。
翌日には無くなっていたので、吉永が寝てから残りを食べていたのだろう。
翼にとっても、それほど親子で過ごす時間は苦痛だったのです。
吉永は、馴染みの居酒屋「ふくちゃん」の和也の話にヒントを得て、電子書籍リーダーを2台買って、1台を翼に渡しました。
お互いに書籍を共有することで、会話が増えたわけではありませんが、それでも翼との距離が少し縮まったような気がしました。
翼が出所して半年、居酒屋でアルバイト
翼が出所して半年後、吉永は翼を馴染みの居酒屋「ふくちゃん」に連れていきました。
翼はぎこちない態度を取りながらも、「ふくちゃん」に行くのを楽しみにしていた様子。
ある日、店主の井川(寺島進)が翼に「アルバイト」をしないかと言ってきました。
吉永は、少年院を出てまだ半年の翼のことを不安に思いますが、勉強の邪魔にならない程度という条件で翼のアルバイトを許可。
翼は週5日6時から10時まで働くことになり、吉永に店での仕事の様子を得意そうに話して聞かせるように。
それから1年ほどたって、吉永は甲府への異動を命じられました。
翼は富士宮に残って、「ふくちゃん」で仕事を続けたいという。
「勉強の方はどうなってるんだ」と吉永が聞くと、「通信教育はやめて、このままあの店で料理人になりたい」と翼。
吉永が純子に相談すると、純子は翼の訴えに最初は難色を示しました。
しかし最後には、自分が求めた道を歩むのが一番いいのでは、という結論に。
そして先週、翼から連絡があり、正社員として雇ってもらえることになったと連絡がありました。
翼は立派に更生できたのか
吉永は「お父さん明日休みなんだ。雑魚寝でいいからお前の部屋に泊めてくれないか」と言って、富士宮へ。
目的は、更生した翼の姿を、そろそろ智康に見せに行ってはどうかと提案するため。
翼は、吉永と智康の約束の話は知りません。
「ふくちゃん」に行くと、井川から、翼は一番頼りになって、来年6月には調理師免許も取得予定だと聞かされます。
翼が作る料理は、どれも美味しいものでした。
翼は店に出入りしている酒屋のユキオと仲がいい様子。
吉永は、翼のアパートに行きました。
翼に、死んだ優斗に対して、今、どんな気持ちを持っているのか尋ねます。
「悪いと思ってる。当たり前じゃない」と目を伏せる翼。
吉永は、翼が自殺を考えるほど追い詰められたことは理解しているけれど、相手の父親・藤井智康からしたら翼が少年院に行った程度で納得できるものではない、と言います。
そして、藤井智康と、翼が更生した姿を見せる約束をしたことを話します。
翼:「僕は更生したの?」
吉永:「お父さんはそう思ってる。だからこの話をしたんだ」
翼:「近いうちに行かなきゃいけないの?」
吉永:「藤井さんは、いつとは言っていない。だけど、お父さんは、あまり遅くない方がいいと思ってる」
吉永:「お父さんは翼が昔のように笑えるきっかけが、藤井さんに会うことじゃないかと思ってる」
翼:「わかった」
吉永は神崎に電話して、智康の都合のいい日に訪問したいと告げました。
そして、次の日曜日に、藤井家を訪問することに決まりました。
前日、翼は不安そうな声で電話してきました。
翼:「何を言ったら、いいんだろう」
吉永:「心からごめんなさいって言えばいいんだ」
翼の前科がバレた!
翌日、吉永は東村山駅の改札で、翼が来るのを待ちました。
しかし翼は約束の時間に来ず、携帯に電話しても留守電に繋がりました。
翼のアパートに行き、何度もインターフォンを鳴らしましたが、出ません。
しかたなく、合鍵で部屋に入りました。
壁にかかったコルクボードを見ると、先日はたくさんあったプリクラが1枚もありません。
ゴミ箱に細かく破られたプリクラが入っているのをみつけたとき、吉永の動悸が激しくなりました。
まさか……。
吉永はまっすぐ「ふくちゃん」に向かいました。
「翼はおりませんか?」と聞くと、井川は「いませんけど」とかすかに身を引きながら返答。
これまで接してきて、はじめて感じる隔たりに、吉永はためらいました。
「何があったんですか?」と聞くと、「彼が作ったまかないを従業員が残したとか、そんなことです」と井川。
吉永は、井川の「私には言って欲しかったなあ」で、翼が店を出る前の光景が想像できました。
店の従業員に事件のことが知られて、翼が作ったものなど食べられないと、まかないを捨てられたのだろう……。
翼はそのことにショックを受けて、店を飛び出した。
吉永が「どうしてそのことを……」と言うと、「うちのバイトが、ここに出入りしている業者に聞いたらしい」と井川。
翼が仲良くしていたユキオという名前を思い出しました。
吉永は「これから翼は……」と聞いて、口を閉ざしました。
井川の表情を見て、それを聞いても意味がないと思ったのです。
吉永は、なぜ今になってユキオが事件のことを知ったのか、と考えます。
もしかしたら、翼は自分が抱えている不安を分かって欲しくて、自分からユキオに話したのではないか?
翼の口から、事件の真相が語られる
夜になって、翼から電話がかかってきました。
翼は「あの場所で待ってる、ペロのお墓」と言いました。
翼が自殺しようとしているのではないかと心配しながら、吉永はペロのお墓がある場所へ向かいました。
吉永が「今は何も考えるな、帰ろう」と言うと、「お父さんに本当のことを話す前にユキオに話したんだ。ユキオがそれでも友達でいるって言ってくれたら、お父さんにも話せるような気がした」と翼。
翼が発する言葉が、波紋のように鼓動を震わせていきます。
吉永:「本当のことって、どういう……」
翼:「ぼくは優斗を殺すために呼び出したんだ。自殺しようとしていたんじゃない」
一瞬息が止まりそうになり、吉永は慌てて息をのみ込みます。
翼:「殺しちゃってかまわないってそのとき思った」
翼は、事件の日の自分の正直な気持ちを話しました。
裁判ごっこで死刑判決になると、次の日にここに来るのが決まりだった。
あの日もハムスターを殺さないといけなかった。
でもナイフを首にあてたら、もがいて噛まれた。
そんなに痛かったわけじゃないけど、手を離してしまった。
よくわかんないけど、逃げてくハムスターを見て、ものすごくむかついたんだ。
ぼくを噛んだハムスターじゃなくて、優斗に対してものすごく怒ったんだ……。
ナイフを向けたぼくを見たら、優斗はどう思うだろう。
びっくりして逃げようとするかな、それとも泣き出すかなって、おかしくなりながらメールを打った。
だけど優斗にメールしたら、急に怖くなった。
誰かに助けてほしかった、誰かに止めて欲しかった。
あの日もハムスターを殺さないといけなかった。
でもナイフを首にあてたら、もがいて噛まれた。
そんなに痛かったわけじゃないけど、手を離してしまった。
よくわかんないけど、逃げてくハムスターを見て、ものすごくむかついたんだ。
ぼくを噛んだハムスターじゃなくて、優斗に対してものすごく怒ったんだ……。
ナイフを向けたぼくを見たら、優斗はどう思うだろう。
びっくりして逃げようとするかな、それとも泣き出すかなって、おかしくなりながらメールを打った。
だけど優斗にメールしたら、急に怖くなった。
誰かに助けてほしかった、誰かに止めて欲しかった。
吉永は、翼が自分に助けを求めていたのに、同僚と飲んでる時間を優先しまった自分を悔いました。
あのとき電話に出ていれば、翼を止められたかもしれない……。
翼:「ぼくはお父さんが思っているとうな子供じゃなくて、本当の僕は酷い人間なんだ。でも、お父さんに知られるのが怖かった。お父さんから自殺しようとしていたんじゃないかって言われて、そうじゃないって言おうと思った。だけど、僕が生きててよかったって言われて、言えなくなった。死んだほうが良かったって言われるんじゃないかって。だけどお父さんに本当のことを言わないと、藤井さんにも心から荒まれない」
翼がユキオに前科について話すと、ユキオは「そうか、そんなことがあったのか」と何でもないように言ってくれました。
しかしいつもは泊まっていくのにその日は帰ると言いました。
そして、翼が作ったまかないを誰も食べませんでした。
そのとき、翼は、誰も自分の作ったものを食べたいと思えないほど、自分は酷いことをしたとわかったのでした。
翼:「死んだって償いにはならない。心からごめんなさいって言うには、お父さんに本当のことを言うしかないって。たとえ嫌われたとしてもそれしかないって」
吉永:「翼のことを嫌いになんかならない」
吉永は神崎に電話して、今は翼を藤井智康に会わせられない、と言いました。
藤井智康はいじめの事実を公にされたくないという気持ちだけでなく、いじめのせいで翼が自殺を考えていたということで、比較的寛容な態度でいたのかもしれません。
しかし、翼が殺すつもりで優斗を呼び出したと知ったら、前言を翻して損害賠償請求をするかもしれないし、マスコミに話すかもしっれません。
なんとしても翼を守らなけらばならない、と思う吉永。
体を殺す方が悪い
甲府の家に帰ると、翼は放心したように吉永のベッドに崩れました。
吉永もベッドの横に毛布をひいて休むことにしますが、2時間たっても眠れません。
2人ともお腹がすいていて、翼がチャーハンを作ってくれました。
吉永はぱくぱく食べましたが、翼はスプーンを持った手を止めて、じっとこっちを見ています。
チャーハンを口に運んだ翼は、むせて喉に詰まらせてしまいました。
吉永は翼の背中をさすりますが、翼はトイレに入ってむせび泣きました。
吉永は考えます。
もしかして自分は翼の作ったものを美味しく食べたから、嬉しがっているのではないか、と。
当たり前なのに気が付かなかった、自分は翼に愛されていた。
翼がこんなにも自分を必要としてくれているのに、自分は今まで何をためらっていたのだろう。
吉永はトイレの中に翼に「どうしても伝えたいことがある」と言いました。
翼が出てくると、吉永は話し始めます。
「いつかお父さんに聞いたよな。心と体とどちらを殺した方が悪いのって。
今なら間違いなく答えられる。体を殺す方が悪い。
もし、二度と翼の声を聞くこともできず、翼に触れることもできなくなってしまったらお父さんはどれほど辛いか……。
病気や事故で翼がいなくなったとしても、とても耐えられない。
ましてや誰かに殺されたとしたら……お父さんは自分の命がなくなるまで、その人間を恨み続けるだろう」
「僕は、優斗だけじゃなく、優斗を大切にしていた人たちの心も殺したんだね……」と翼。
翼が「これからどうしたらいいの?」と聞くと「考え続けるんだ。お父さんも一緒に考えるけど、お父さんもお母さんもいつか死ぬ。お前はひとりになっても考え続けなければならないんだ」と吉永。
吉永が「お父さんが人生の最後に考えるのは翼のことだ」と言うと、翼は「僕、藤井さんに会いたい」と言いました。
藤井智康の家へ
吉永と翼は、藤井家に謝罪にいきました。
吉永はお焼香を上げさせてもらえましたが、翼はさせてもらえません。
藤井智康が「君は優斗を憎んでいるんじゃないのか。自分の方が被害者だと」と言うと、「そう思っていた時もありましたが、優斗くんにひどいことをしてしまったのは事実です。取り返しのつかないことをしたのは……」と翼。
藤井は写真立てを取り出しましたが、そこには翼と優斗が写った写真が入っていました。
「優斗の引き出しに入っていた。私たち家族の写真は家に飾るのも嫌がっていたのに」と智康。
藤井は翼の顔は見たくないけれど、この写真の優斗が家にある写真で一番いい顔をしているから捨てられないのです。
翼の部分を引き裂こうかとも思いますが、優斗の顔が曇りそうで出来ません。
「わたしは死ぬまで君の顔を見続けないといけない、この気持ちがわかるかい」と智康。
翼は智康から写真立てを奪い、写真の中の優斗に泣きながら謝りました。
智康はあっけにとられたように見ていましたが、写真立てを取り返そうと翼の手を掴みました。
それでも翼は手を離しません。
ガラスがひび割れ、押さえつけた翼の指先から血がにじんでいきます。
「ごめん……ごめん……」
翼は激しく体を震わせ、汗と鼻水とよだれを垂らしながら、写真に向かって謝り続けます。
翼の体液が自分の手に、そして翼の手に爪を食い込ませている智康の指に伝わっていきます。
吉永が写真立てを放させると、床に突っ伏して翼は泣きました。
吉永は智康に今までのことを謝罪しましたが、「帰ってくれ!」と絶叫する智康。
智康が翼の襟首を掴んで、引っぱっていました。
智康が翼と吉永の肩を何度も突いて、部屋の外に追い出しました。
目の前でドアがぴしゃりと閉められて、閉ざされたドアの向こうから智康の咆哮(ほうこう)が聞こえました。
靴を履いていると、ドアが開きました。
「最後に線香をあげてもいい。でももう二度と来ないでくれ」と智康。
吉永は「ありがとうございます」と言って、翼に頷きかけました。
翼は智康に深々と頭を下げると、歩き出し、部屋に入りドアを閉めました。
智康は「私は上にいます。終わったら勝手に帰ってください」と言って二階へ。
ここはもっとも辛い場所のはずなのに、翼はなかなか出てきません。
いや、もしかしたらここは翼にとって、唯一救済の場なのかもしれない、と思う吉永。
ここには全てを知ってる人しかいないから。
一歩ここを出たら、そうはいきません。
たとえ心許せる人と出会ったとしても、人を殺したことの言い訳は許されません。
ここを出るのが怖いけれど、翼も同じ気持ちだろう。
だけど、ずっとここにいるわけにはいかない。
たとえ二度とここに来られなかったとしても、二度と藤井智康さんに会えないとしても、それでも心から謝り続けるために。
翼、そろそろ行こう。
吉永は立ち上がり、閉ざされたドアに向かって歩き出しました。
もうひとりにはさせない。
(FIN)
まとめ
『Aではない君と』の原作あらすじのネタバレをまとめました。重厚な原作に、豪華なキャスト陣……ドラマの放送日が楽しみでなりません。
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