2018年12月14日(金)に、東海テレビ開局60周年スペシャルドラマ『大誘拐2018』が放送されます。
絶賛された1991年の映画『大誘拐 RAINBOW KIDS』の現代版ということで、期待が高まります!
当記事では『大誘拐2018』の原作小説のあらすじをネタバレして、2018年版の見どころや映画版との違いをまとめています。
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もくじ
『大誘拐2018』の原作とは?
『大誘拐2018』の原作は、天藤真氏が1978年に発表した同名推理小説。
1979年に第32回日本推理作家協会賞を受賞、『週刊文春』が主催する“20世紀傑作ミステリーベスト10”で見事に1位を獲得しました。
原作のあらすじのネタバレ
原作小説「大誘拐」のネタバレをしていきます。
刑務所から出た3人の若者が、紀州随一の大富豪のおばあちゃんを誘拐
大阪刑務所の雑居房で知り合った戸並健次(岡田将生)、秋葉正義(森田甘路)、三宅平太(中尾明慶)の3人は、出所するや営利誘拐計画の下調べにかかります。
狙うは紀州随一の大富豪、柳川家の当主・とし子刀自(富司純子)【刀自(とじ)とは、お年よりのご婦人の敬称】。
県内はおろか全国に聞こえる資産家で、持山はおよそ4万ヘクタールだという。
ある日、柳川とし子刀自が若い小間使いの吉村紀美(井原六花)と山を散歩していると、突然3人の覆面の男(健次、正義、平太)に取り囲まれます。
刀自は3人の目的が自分を誘拐することによる身代金だとわかると、紀美を解放することを要求。
その代わりに自分は何でも何でも言うことを聞くと約束します。
3人は刀自の要求を飲み、刀自に目隠しをして車(黒のマークⅡ)に乗せてアジトへ移動。
刀自は目が見えないに状態もかかわらず「ところでアジトやけれども、和歌山県やないやろな」と3人のアジトの場所を言い当てました。
そして和歌山県の警察本部長・井狩大五郎(渡部篤郎)ならば、これぐらいすぐにわかると言いました。
井狩は4浪して大学を出た際に、刀自に援助をしてもらっていて、刀自を恩人と慕っている人物。
刀自が誘拐されたとなれば、目の色を変えて捜査するのは間違いありません。
刀自の提案で、くーちゃんの家へ
リーダーの戸並が「困った、他にどこかいい潜伏先はないか」とたずねると、「心当たりがないことはない」ととし子。
刀自と3人は、刀自の家に以前勤めていた初老の女中・くーちゃんこと中村くら(榊原郁恵)のところへ。
くーちゃんの家は、周囲から独立した一軒家で、テレビアンテナすらありません、確かにここは穴場です。
一方、3人に解放された紀美は、安西運転手(渡辺憲吉)に刀自が誘拐されたことを知らせました。
安西は午後7時15分に和歌山県警に知らせますが、この電話を受けたのが東京出身でキャリア組の若い警部補(映画では“東京”と呼ばれる)で、彼はとし子のことを知らず、ただの82歳の老婆の失踪と考えて放置。
しかしその後、同僚からとし子が井狩の恩人だと知らされた“東京”は、午後10時20分に井狩に刀自が誘拐されたことを報告。
井狩は「こんな重大事件を3時間も寝かせておいたのか!きさまなんか首をくくって死んでしまえ!」と怒鳴り、すぐに車の手配をさせました。
一方、刀自のお屋敷には知らせを受け、刀自の次男の柳川国二郎(長谷川朝晴)、次女の田野可奈子(国生さゆり)、三女の田宮英子(平岩紙)、四男の柳川大作(棚橋弘至)が集まりました。
刀自の長男と三男は戦死してしまっています。
井狩は刀自の想像通り、でっかい火の玉となって捜査を開始。
連絡を怠った“東京”には罰として、井狩のそばを離れないように命令。
井狩は刀自のお屋敷に行き、4人の子供に身代金を前もって用意してくれるように頼みます。
長男の国二朗が「3億円でどうですか」と言って「結構でしょうな」と井狩。
さらに井狩は、捜査は公開捜査にさせてほしいとお願いします。
末娘の英子は犯人を刺激することになるんじゃないかと心配しますが、「マスコミに知らせて世間を味方につけることで、刀自の身の安全が保障されます」と井狩。
虹の童子
さて、話は刀自に戻ります。
刀自の来訪をくーちゃんは手放しで大喜び!
くーちゃんにとって大事なのは刀自だけなので、3人は“お供の衆”呼ばわりされます。
刀自はくーちゃんにしばらく滞在させてくれと頼み、くーちゃんは快諾。
刀自は3人を雷太郎、風太郎、雨太郎と紹介します。
くーちゃんは3人がサングラスにマスク姿であることも気にせず、深く追及もしません(薄々勘付いてはいるようですが、刀自を全面的に信頼しているのでどんなことでも協力するつもり)。
翌朝早々、正義は、くーちゃんの知り合いの若い女性・邦子(『大誘拐2018』ではミナちゃん)に顏を見られて本名も名乗ってしまいます。
そして平太も前の晩に刀自に身の上話をした時に、つい本名を漏らしてしまいました。
健次だけは頑なに「雷太郎」でい続け、マスクとサングラスもつけたまま。
刀自は、誘拐犯3人の名前を「虹の童子」とつけました。
理由は、雷、雨、風、つまり暴風雨が去った後には虹が出るから。
身代金は100億円
次に刀自は「身代金はいくらにするつもりですか?」と聞いてきました。
健次が「5000万」とこたえると、刀自の顔色が変わります。
刀自は「この私を何と思うてはるん?痩せても枯れても大柳川家の当主やで!キリよく100億や!」と言い放ち、身代金は前代未聞の100億円に決定。
100億円という巨額にビビりあがる健次たち。
そしてこれ以降の主導権は刀自が握ることになります。
警察側はと言うと、健次たちのアジトを突き止めていましたが、当然ながらそこにはもう誰もいません。
以降は手掛かりもなく、誘拐犯からの連絡待ちになります。
そして、とうとう犯人の接触があります。
刀自の直筆の手紙で、内容は身代金100億円の要求と、その前にテレビ局の生放送で和歌山県警本部長の井狩が連絡することの要求でした。
誘拐団の名前は「虹の童子」と書いてあります。
100億円という金額の多さに県警本部はざわつきます(映画では井狩は禁煙パイポを折ります)。
マスコミはこぞって騒ぎ立て、この騒動は海外でも話題に。
そんな金額など用意できないと揉める国太郎と可奈子ですが、英子だけは刀自の身を心配します。
井狩は「刀自が安全快適に過ごしているか」を犯人をあぶり出す武器として使うことを思いつきます。
井狩が「虹の童子」に条件を出す
テレビの放送が始まって、井狩が画面を通して犯人に語りかけます。
刀自と3人は、くーちゃんの家にテレビがないので、ラジオで聞くことに。
井狩は「諸君の要求は法外である。過去の例から見て最高額の度外れに膨大な要求をするのは、要求を出す方が無茶なのである」と言い放ち、以下の2つの条件を出します。
- 共通の土俵を作れ。
- 刀自が安全かつ快適に過ごしているのか不安だから生の声を聞かせろ。
放送を聞いた3人は頭を抱えますが、刀自は冷静に頭を巡らせていました。
刀自をテレビ、ラジオを通して家族と対面させる
数日後、2通目の犯人からの郵便物が届きます。
今回も刀自の直筆です。
内容は「刀自をテレビ、ラジオを通じて家族と対面させ、その席上で身代金調達の方法を刀自の口から命令させる。もちろん、このテレビ体面は、我々の完全な手動下に実施されないければならない」というものでした。
具体的にはテレビ局から放送車を出発させ、任意の時間に犯人が放送車に接触するというのです。
みんなの注目は、当然ながら出発する放送車に注目していました。
その隙をついて、ピンクの花柄ワンピに白い帽子、サングラスをかけた健次がテレビ局に入っていき、社長室に入って、無言で刀自からの手紙を渡します。
刀自直筆の手紙に絶句する社長たちは、健次の舌の上にあるのが毒入りカプセルと知ると、健次に従ってこっそりテレビ局を抜けて、車を走らせました。
つまり本物の放送車をダミーにして、こっちから放送する作戦です。
社長らと健次が乗る放送車から連絡がきて、裏をかかれてしまった井狩は唇を噛みます。
社長は、今持てる限りの情報を井狩に告げます。
場所は津ノ谷村(映画では龍神村)の一角で、前を谷川が流れている深い山中。
津ノ谷村といえば刀自のお屋敷のあるところで、そんなところに犯人が出没するとは思っていなかったので、人員も割いていませんでした。
犯人から懐中電灯の合図があり、カメラのライトをつけます。
刀自が、川の向こう側の岩の上に姿を現しました。
刀自は自分が元気であることを告げたあと「時間もないよってに、ビジネスライクにいきますな」と言います。
100億円の調達方法とは
刀自が子供たち4人に告げた驚きの100万円調達方法とは……
贈与税を払っても、身代金100万円は十分に払えるはず。
マイクを置いた刀自が去ると、様々な色紙を貼られたマークⅡが走り去りました。
放送を終えた後から、柳川家では一家総出で電卓片手に計算が始まりました。
健次と刀自の過去
その夜、健次が刀自の前ではじめて顏を見せました。
刀自は「登山ナイフの子やないか、戸並健次くん」と覚えていました。
健次は幼少期を「愛育園」という施設で過ごし、中1の時に彼は刀自あてのリクエストの紙に「登山ナイフ」と書きました。
刀自は創立記念日には必ず訪れ、園のみんなに希望のプレゼントをくれていたのです。
健次にとって登山ナイフは憧れの品でしたが、園長は「こんな危ないものをおねだりするとは何事だ」と激怒。
刀自は「堪忍してな、坊や。何か他のもんにしてな」と優しいいたわるような声で言ってくれましたが、健次は「いらん!何もいらん!」と言ってしまいました。
話は現在に戻って、健次は刀自が自分のことを覚えていてくれたことが嬉しく、涙を流しました。
そして刀自のことを全面的に信頼していて、刀自を解放したあとに、自分が犯人として突き出されても文句は言えないと言いました。
翌朝の刀自のお屋敷では、4人の子供たちが刀自の山林の値段を計算しているうちに、心通わせ一致団結していました。
特に4男の大作は、今まで絵描き志望で生活費を刀自に出してもらうようなロクデナシでしたが、今回で経理の才能があることを見出しました。
その頃、警察は龍神村に犯人のアジトがあるのではないかと捜査。
そしてとうとう“東京”が、周囲から孤立した一軒家をみつけますが、これこそくーちゃんの家!
しかしながら、テレビアンテナがないという理由で、捜査対象から外れます(笑)。
これも、刀自の計算通りです。
身代金受け渡しの日
そしていよいよ身代金の受け渡しの日。
この日、全世界の注目は身代金受け渡しに集まっていました。
アメリカ海軍は「警察が勝つか、RAINBOW KIDSが勝つか」で駆けをします。
100億円はカメラの前で透明の袋に詰め込まれます。
ビニール袋は合計25袋になり、ヘリに乗せるとぎゅうぎゅう詰めに。
100億円を乗せたヘリは、和歌山の基地を離陸してコース上を飛びます。
後ろからマスコミのヘリも追いかけて、一部始終が放送されます。
その後、犯人の指示を受信した高野パイロットは、犯人が指示する場所に着陸。
またもや山中の川の中州らしき場所。
県警は急いで場所の特定にあたりますが、近くに細い山道はあるものの、車が入れない場所です。
その後犯人が現れたという知らせとともに、中継機は以降の追尾を禁じるという命令が入ります。
ここが終点ではなく、これから奴らが飛んでいくところが本当の目的地だったのです。
その後、トラック(犯人が乗ってきた)に見せかけたマークⅡが爆発します。
100億円を乗せたヘリは空に消えますが、「消えたところから戦いが始まるんだ」と井狩。
ヘリは酔っ払い運転のような大迷走を続け、その後龍神村に向かいます。
犯人からの領収書
いよいよだと井狩は思いますが、ヘリは柳川家の上空を通過。
そして通信筒がパラシュートをつけて、庭に落ちてきます。
それは100億円をいただいたという領収書で、裏面に「刀自は10月4日正午までにお返しする」と書かれていました。
犯人は既に100億円をゲットした後だったのです。
「犯人は『木の葉は森へ隠せ』の古事に従って、目的地を隠すために、わざわざ混迷飛行を演じて見せたのだろうか」と思う井狩。
その可能性は十分にあって、本部の実験では、ヘリを地表近くまでおろして、中の包みを機外で放り出すのに、所要タイムは2人がかりなら3分もあれば十分なのです。
ヘリはその後海に出て、南方の洋上へ消えました。
虹の童子の消息はその後、誰にもわかりません。
その後、幽鬼岬で発見された高野パイロットによると、ヘリに乗ってきて指示してきたのは身長1メートル53、4㎝程度の小柄な男。
目隠しされて縛られていた間に聞こえてきた声は、袋をおろすズシンとした音と少なくとも7~8人の掛け声、中には外国人も混ざっていたという。
犯人はその後、船外エンジンで沖合へ出た様子で、目隠しを外された高野パイロットの目には、もうヘリはなかったとのこと。
この話がマスコミに伝わって「犯人の背後には大組織があったんやな。行先はホンコンか、マカオか。インドネシアか」という説が主流に。
刀自が無事に帰ってくる
柳川家には「4日正午」のリミット近くになって、紀美へ電報が入ります。
『ゴザミサキデマツ RC』
御座岬とは、4男の大作の家でした。
家族と井狩が駆けつけると、アトリエで刀自が眠っていました。
こうして刀自が無事に帰ってきたことで、事件は収束しました。
刀自誘拐事件から、1か月が経過。
津ノ谷村にマスコミの姿はなく、代わりに津ノ谷村は観光名所になっていました。
事件を知った観光客たちは、柳川家を一目見ようと、津ノ谷渓谷前で多くの乗客が降ります。
刀自VS井狩
そんな中、井狩は気軽なホームウェア姿で柳川家の門をくぐりました。
刀自は若い男性職人(健次)を雇い、お堂の手入れをしていました。
そこに井狩がやってきたので、刀自は職人(健次)に休憩を命じます。
そして刀自は、井狩と差し向かいに座りました。
井狩は「誰も信じないだろうな。しかし、私は信じますよ。信じるほかにないんですからね。何を、とお聞きにならないんですか」と切り出しました。
刀自は「聞きたい思うてましたんや。何をだす?」とすっとぼけます。
井狩:「誘拐団にさらわれたお年寄が、自分が誘拐団の首領になって、犯人どもを手足のようにこき使って、莫大な身代金を、自分の子どもたちから巻き上げた、という途方もない物語をですよ」
刀自:「もしかしたら、そのお年寄りいうんは、私のことを言うてはるんと違いまっか」
井狩:「もしかしなくてもですよ。うーン、そうぬけぬけおっしゃるお顔を見てると、だんだん自信が出てきたぞ。間違いないな、この人だ。このお顔は、そんな常識外れのことでも、髪の毛一本動かさないで、平気でやってのける顏だ。そうですよ、大奥様、あなたのことですよ」
刀自:「えろう丁寧にいわはりましたなあ。でもなあ。そないに名指しでいわはるからには、それなりの理由いうもんがおますんやろなあ。すこしは訳を聞かしてほしい」
井狩は「この犯罪は、プロの仕業でもちんぴらグループのものでもない。もっとゆとりのある大らかな人間性を感じさせるんですな。獅子の風格と狐の抜け目のなさと、そしてパンダの親しさを兼ね備えた人格ということですかねえ。そしてある日気付いたら正にぴったりな人物が事件の中心に座っているじゃないですか」と言います。
そして、刀自が犯人だと考えてはじめて解ける謎がたくさんあると語ります。
第一に犯人にこの辺りの土地勘があったこと、第二に犯人がここという時に選んだ場所は全部柳川家のホームグラウンドであること。
第三に、ヘリのめちゃくちゃな飛行。
ただ犯人の指示だからと言ってああも乱暴に飛び回れるものではないが、高野パイロットはあえてしたのです。
その理由は、高野に指示した犯人が刀自だったから。
高野にとって刀自は恩人であり「刀自の命令なら悪魔の命令でも聞く」のです。
そして刀自は、手紙の文面で高野が必ず100億円を運ぶパイロットに選ばれるように誘導していたのです。
井狩は、なぜ見も知らぬちんぴらのためにこんな大芝居を売ったのかと聞きます。
それを聞かれた瞬間、刀自の視線はお山へと向けられます。
体重計の目盛り
それは体重計の目盛りでした。
秋風が立った9月の上旬のある夕方、刀自がいつものように入浴して体重計に乗ると、針は26の間近で止まりました。
刀自の標準体重は35キロなので、つまり10キロも減ったことに。
刀自の頭にいろんな場面がフラッシュバックします。
「10キロ減ったら赤信号やね。ここのおじいさんもやせはったなあ、思うとったら案の定や」と癌で亡くなったおじいさんの葬式で囁く人々の声。
自分もおそらくは癌で、余生短いことを知った刀自は、洗面所から見えるお山を見ます。
そのお山は現在は刀自のものですが、刀自が死んだら国のものになります。
刀自の中からお国に対する憎しみが込み上げてきました。
自分から(戦争で)息子や娘を奪い、それでも足りずに自分の命にも等しい「お山」を奪おうとするお国への憎しみ。
そんな時に、あの誘拐事件が起こったのです。
刀自はその時思いました。
「こうして神様がおぜん立てして下さったんや。このもの達を道連れに思いきり死に花咲かしたろ。これを機会にお国からも、むしれるだけむしったろ。子らに活を入れるんにも、ええチャンスや。このものたちにも目一杯報いてやらなあかんな。おかげで82年を煮詰めたよりも、もっと興奮的な時間が持てるんやさかいな」
柳川家の損害は100億円の3分の1?
井狩が「それにしても度が過ぎやしませんか。なぜあんな金額(100億円)になさったのですか?」と聞くと、「知らんもんが聞きますと、まるで私が決めたみたいですけどなあ、でもなあ、あの身代金につきましては、世間に少々誤解があるんやないか、という気がしますなあ」と刀自。
その誤解とは、世間では、柳川家は100億の損害を被ったと思っていること。
実は損害はその3分の1に過ぎず、残りは国が出したことになるのです。
つまりこうです。
刀自が亡くなると相続税として莫大な金額を国に納めなければならず、刀自はそれが嫌でした。
だから生前贈与して、控除分が27億円、お目こぼし分が37億円、国に負担させたのです。
井狩が「百億ものあぶく銭を抱え込んだちんぴらどもはどこに行ったんですか?まさかご存じないとはおっしゃらないでしょうね?」と詰問。
刀自でも逃げ場がないはずの正面きっての詰問ですが、次の瞬間、井狩ははっと胸をつかれます。
思いがけないことに、刀自は「すんまへんな井狩さん」としみじみと言って深々と頭を下げたのです。
「あんたの立場はようわかります。でもそれだけは死んでも言えまへん。私、今ではなあ、あのものたちの母代わりみたいなもんですのや」
正義と平太が分け前を放棄
時間は、身代金の夜に遡ります。
状況は万事順調に見えました。
ヘリがくーちゃんの庭に着地して正義たちが飛び乗って金袋を投げおろす、高野パイロットが柳川家に向かって飛び去る、金袋を納屋の二階へ運び上げるといった感じで。
その後、納屋で歓声が上がります。
3人が100億を前にどんちゃん騒ぎを始めたのです。
しかし正義が下りると言い出して、事態は一変。
邦子(ミナちゃん)と結婚してくーちゃんの養子になるから、100億は1円も受け取れないと言うのです。
次に平太ですが、最初の取り分1千万だけでいいと言い出します(最初は身代金5千万の予定で、健次が3千万、正義と平太が1千万ずつの取り分でした)。
健次は「こないなことになったのはおばあちゃんのせいやないか。高野パイロットと平太と2人分引いた99億8千万をどう処理したらいいか、ちゃんと責任は取ってもらいますよってな」と刀自に言います。
そして正義は今もくーちゃんの家にいて、平太は故郷へ帰っていきました。
そっくりさん
健次はと言えば……。
刑務所で覚えた木工を武器に、コネをさがして刀自の家に入り込んで、雑用を足しながら、将来に備えて刀自の生活ぶりを見習っておきたいというのです。
刀自:「うちには紀美はんがおるやないの。口きいたらいっぺんにバレてしまうわ」
健次:「今やったらまさか犯人がノコノコ出入りするとは思わへんさかい、声のそっくりさんですむやないか」
また時間は現在に戻って、刀自と井狩。
井狩が「かれらが二度と悪事をしない、と保障できますか」「100億円は悪用されない、と保証できますか」と2つの質問をすると、刀自はどちらにも「はい」と答えました。
「おばあちゃまの一言なら金鉄です」と井狩。
井狩は今、庭の持仏堂の前に足を止めました。
実は中には99億8千万が入っています。
そこに紀美がやってきて「うちのお部屋の窓をなおすの、そっくりはんに頼んでいいですか?」とたずねます。
「またお堂の細工が遅れるけどしゃあないな。OKしたと串田はんに言うてお置き」と刀自。
井狩が「だれですか、そっくりはんて」と聞くと、「さあ、歌手かタレントのそっくりはんでっしゃろ」と刀自。
井狩:「おばあちゃま、ちょっとお太りになられましたね。あのころは夏やせしておられたんですか」
刀自:「さいな。夏は弱うなりましてなあ」
刀自の体重は30キロに戻り、あれは癌ではなくただの夏やせだったことが判明。
でもいつの日か、持仏堂の台の中が空になって、そっくりさんが旅立って行くまでは、刀自は死ねません。
それにしても一人の「金使い」を作り出すにはどうしたらよくて、どのぐらい時間がかかるのでしょうか。
(FIN)
映画『大誘拐 RAINBOW KIDS』とは?
小説「大誘拐」は、1991年に『大誘拐 RAINBOW KIDS』というタイトルで映画化されています。
柳川とし子刀自役を北林谷栄さん、戸並健次役を風間トオルさん、井狩大五郎役を緒形拳さんが演じました。
最後の刀自と井狩の対決シーンが原作と少し違います。
原作通り、井狩は刀自を追い詰めるのですが、最後には「早い話、あれはおばあちゃまにとって楽しいメルヘンだったんですな」と笑顔を見せるのです。
映画の井狩の方が、あたたかいイメージです。
『大誘拐2018』と映画の違い
『大誘拐2018』と映画の違いは以下の2点です。
物語の舞台を移動
『大誘拐2018』では、物語の舞台を東海地方に変えています。
ゆえに柳川とし子は、愛知県に住む日本有数の大富豪(原作と映画では紀州随一の大富豪)。
現代版にリメイク
小説「大誘拐」はおもしろくて隙のない原作なのですが、時代とともに社会の状況や通信機器の進化、働き方、職場の上下関係など、さまざまな変化がありました。
それに伴い、人の気持ちや考え方も変わってきています。
ゆえに『大誘拐2018』は、原作を現代版に置き換えて物語を展開します。
映画版は、原作にほぼ忠実な流れです。
『大誘拐2018』の見どころ
『大誘拐2018』の見どころは以下の3点です。
前代未聞の渡部篤郎
大ブレイクとなった『ケイゾク』をはじめ、刑事役を数多くこなしてきた渡部篤郎さん。
しかし今回渡部さんが演じるのは“たたき上げ”の刑事で、ジャンパーなんかを着ていて名古屋弁。
たくさんのこだわりがあって、今までに見たことのない渡部さんの刑事役になっているとのこと。
現代版のとし子VS井狩
とし子は大富豪で、人望も厚く、品があって頭脳明晰で迫力もある女性。
そんな人だからこそ、県警本部長・井狩の裏をかく作戦が立てられるのです。
2018年度版のとし子VS井狩が楽しみです。
家族全員で楽しめるドラマ
近年は家族そろって楽しめるドラマが少なくなってきましたが、本作は。笑いあり、涙あり、ミステリーにスッキリ爽快感と、すべてがそろった冒険活劇で、家族や友人とわいわいガヤガヤ楽しめる内容。
まとめ
『大誘拐2018』の原作小説のあらすじをネタバレして、2018年版の見どころや映画版との違いをまとめました。現代版にリメイクされた『大誘拐2018』が楽しみです!
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