ドラマ「陸王」の2話が終わった段階で、ネットでは「寺尾聰のシルクレイの話がとても面白い!」や「竹内涼真の茂木君が心配!」といった声が多く寄せられていて、ドラマの評判は上々です。
しかし一方で、ドラマの「陸王」では、何人もの登場人物のキャラが立っていてどこを中心に見て良いかわからないと言った声もあります。
池井戸潤の原作小説「陸王」のポイント(視点)から、ドラマ「陸王」の2話までのあらすじと今後の展開を予想してみました。
池井戸潤の原作小説「陸王」のポイント(視点)
原作小説「陸王」は、大きく分けて3つのポイント(視点)でストーリーを展開させています。その1つ目のポイントは、原作者の池井戸潤は自分が銀行員であった経験(三菱銀行で1988年から1995年まで勤務し、その後コンサルタント業を起業)から、銀行員坂本太郎に自分の姿を投影し、物語を展開しているように思えます。
原作中、坂本は担保が無ければ融資しない、実績が無ければ協力しないという銀行の体質に疑問を抱き続けます。
そして、転勤して間もなく独立してコンサルタント会社を作り、「こはぜ屋」などのベンチャー企業を支援してゆくのですが、その方針は企業の将来の収益性に重きを置くもので銀行とは真逆の考え方です。
ここに池井戸潤の「陸王」で描きたかったポイントの1つがありました。
その2つ目のポイントは、茂木裕人選手が足を故障してライバル毛塚直之から大きく後れを取り、支援を受けていたアトランティスから打ち捨てられ、監督からも最後通告を突きつけられて、発奮するも空回りの状態になるところから、
同じく一度は捨てられたシューズ「陸王」に目が留まる場面です。
そこには、怪我をしないミッドフット走法をコンセプトに作った靴という作り手の気持ちが込められ、茂木の気持ちを揺り動かしたのです。
ここに池井戸潤の「陸王」のポイントの2つ目がありました。
そして、3つ目のポイントは、「シルクレイ」を使って最高品質の品物を作ろうとする宮沢社長のブレない決意です。
2話では息子大地の凄まじい就職活動の回数を知って、「おれはまだ諦めちゃいけない」と思い返し、飯山に食い下がる場面があります。
その熱意が、飯島をして宮沢の着るこはぜ屋の法被(はっぴ)の勝ち虫のマークに目を留まらせて、こはぜ屋の工場へ足を運ばせ、「シルクレイ」を使えることに繋がったのです。
諦めたら終わりだと思う気持ちは、この小説「陸王」のポイントの3つ目でもあるのです。
ドラマの「陸王」2話までのあらすじ
埼玉県行田で老舗足袋製造業者「こはぜ屋」を営む社長の宮沢紘一(役所広司)は、昔からの取引相手の大徳百貨店から売り場面積の縮小を言い渡されて、次第にじり貧となってゆく業績をなんとか挽回しようと悩んでいましたが、メインバンク埼玉中央銀行行田支店の融資担当者坂本太郎(風間俊介)から新規事業への展開を促され、ランニングシューズへの進出を考え始めます。
そして坂本に紹介されたスポーツショップを経営するランニングインストラクターの有村融(光石研)に誘われて観戦しに行った豊橋国際マラソンで、
茂木裕人(竹内涼真)が足の故障でライバルの毛塚直之(佐野岳)に抜かれてリタイヤするのを目の前で見た宮沢は、怪我をしない人間本来のミッドフット走法を実現できるランニングシューズを開発しようと方針を決めたのでした。
こはぜ屋の工場に戻ると先代が開発したゴム底のランニング足袋を倉庫の奥から従業員の安田利充(内村遥)が発見し、それを基にしてソールを改良して薄くし、何度も試作品を作って宮沢自身も毎日、試走を繰り返していたのです。
すると、有村からゴム底の耐久性を指摘され、レース用としては使えないと言われてしまいます。
そんなある日、その有村から光誠学園の生徒が履くランニングシューズの保護者への説明会があるので参加してみないかという誘いがあり、宮沢がさっそく光誠学園の担当者を訪れると、「陸王」と名付けた「こはぜ屋」のランニングシューズを評価してくれたのです。
しかし、説明会当日に大手スポーツ品メーカーのアトランティスとのコンペであったことが判り、選定結果の知らせを待ったのですが、「陸王」が採用されることは無かったのでした。
そこで宮沢は、ランニングシューズを作るきっかけとなったダイワ食品の茂木を訪ねようとするのですが、監督の城戸(音尾琢真)に門前払いのような扱いを受けて、
その上、茂木選手に渡して欲しいと城戸に頼んだ「陸王」は、無残にもゴミとして捨てられてしまいます。
そんな折、埼玉中央銀行の坂本は、「こはぜ屋」への融資で支店長の方針に異を唱えたために前橋支店へ転勤になります。事実上、基盤の弱い前橋支店への転勤は左遷でした。
そして、担当者引継ぎの挨拶に坂本と上司の融資課長の大橋(馬場徹)が、「こはぜ屋」の宮沢社長と面会するのですが、その場で大橋は、新規事業への進出を進めた坂本を罵倒し、リストラによって会社の財政状態を好転させて欲しいと提案したのです。
これには宮沢も「こはぜ屋」従業員も大橋に対して反撃を開始したため、大橋はこの日は撤退するのですが、報復を恐れた専務の富島玄三(志賀廣太郎)は支店長に会って謝っていたのでした。
実はこの日、坂本は「こはぜ屋」に残って、宮沢社長に前橋支店にサンプルとして持ち込まれていた「シルクレイ」という素材をソールに使えないかと言ってきたのです。
しかし、「シルクレイ」の開発者飯山晴之は現在、会社を潰して隠れていて、すぐには連絡が取れそうにありません。法的な処置は済んでいても、街金融業者などが着け狙って報復されかねない立場に飯山はあったのです。
再び坂本からの連絡で、飯山と宮沢社長は会えることになったのですが、飯山が警戒している上、毎年5000万円の「シルクレイ」の特許使用料を求めてきたのです。
この先は原作にはないドラマ独自の設定ですが、この特許使用料には飯山としては理由があったのです。
それは、アメリカの化学会社シカゴメミカル社が飯山の「シルクレイ」に興味を持って既に毎年5000万円の使用料を提示していたのです。
とても応じられない金額を提示された宮沢ですが、有村から「シルクレイ」の素材としての優秀さとこれを上回るものは無いとの報告を受け、諦めきれません。
何度も飯山を訪ねて「シルクレイ」を使わせてもらうように頼み込みますが、飯山から相手にされないのです。
そして、いつも通り飯山を訪ね「こはぜ屋の工場を見て欲しい」と願う宮沢の熱心さに折れて飯山は「見るだけ」という条件でこはぜ屋を訪れます。そこで、飯山が見たものは100年も使っているミシンとそれを慣れた手つきで扱う年配
の縫子たちでした。
飯山が工場の中を歩き回っている最中に、突然一台のミシンが糸を拾わなくなります。部品の一部が修復できない程破損してしまったのです。ところが、壊れて動かなくなったミシンの交換部品を、すぐに倉庫のジャンク品を分解して調
達し、交換してミシンを使えるようにしたのは飯山だったのです。
みんなの称賛の声に「昔、縫製工場に勤めていたことがあるんだ」と恥ずかしそうに笑った飯山でしたが、「シルクレイ」のことは譲らないと頑固に宮沢たちを突き放します。
しかしここも原作にはないのですが、そんな飯山の態度が変わったのは、シカゴケミカル社から「飯山の倒産歴が社内で問題になって、結局契約できなくなった」という連絡が来てからでした。
しばらく、当てにしていた目算が外れて落胆していた飯山でしたが、宮沢に大型トラックを用意して来るようにと連絡を入れます。そしてやってきたのが、とある農家の倉庫。ここに「シルクレイ」の製造機械が保管されていたのです。
使えるように保守もされ、運び出せる状態になっていました。
そこで初めて飯山は条件を切り出します。「おれをランニングシューズのプロジェクトチームに加えてくれ」これが一番大事な条件だと言い出したのです。
ドラマ「陸王」これからの展開予想
飯山晴之と「シルクレイ」特許の使用許諾契約が結ばれて、開発研究用の設備も提供を受けることになったのですが、設備の運転には人手が要ることになります。そこで、白羽の矢が立ったのが宮沢の息子大地です。宮沢社長は、就職活動の間、手伝わさせていた検品作業に身の入らない大地を社運のかかった新規事業に加えることに難色を示しますが、工学部を卒業している大地の他に設備を動かす知識をもっている人間はいないという社内の声に、
宮沢は大地を飯山顧問の補佐役に据えます。
ところが、その大地が熱心に研究を重ねる飯山に刺激を受けて、力を付けてくるのです。そして、副産物として「シルクレイ」を使った地下足袋「足軽大将」が世の鳶職(とびしょく)の人たちから絶賛され、成果を表してくるのです。
「シルクレイ」を使ったソールが完成されるまで、こはぜ屋の経営は徐々に苦しくなっていましたが、これでやっと息を付ける状態にはなりました。
しかし、「足軽大将」が売れても需要は限られ、ランニングシューズ「陸王」が完成しても今の開発研究用の設備では量産は難しく、やがては大きな設備投資が必要になって来ることは間違いありません。
メインバンクの埼玉中央銀行が、実績のない新規事業のための融資をする筈はありません。
そこで坂本のもたらす新たな情報が、設備投資資金を得るために役立つ日がきっと来ると予想しています。
まとめ
宮沢紘一が4代続いた老舗足袋業者「こはぜ屋」を自分の代で終わられたくないと思う気持ちから新規事業としてランニングシューズの開発に乗り出すという設定でこの物語は始まったのですが、実は先代社長も同じことを考えてランニング足袋を作って売れずに失敗していたことが、すぐに分かるのです。しかも、専務で経理担当の富島玄三は先代にも使えていたので、そのことを知っているため社長宮沢紘一の方針に強く反対
し、二人は激しく反目する場面が原作にはあります。
銀行の大橋融資課長がリストラを融資の条件にして来た時も、その提案を評価したのは富島玄三ただひとりでした。
それでも、最後に坂本から会社の存続に関わる大きな提案を受けた宮沢社長は、反目が続いていた富島玄三にだけは決断の前に話をして、その結果、危機を乗り越え、逆転の発想で成功を収めることになるのです。
池井戸潤が描きたかった「陸王」の影の主人公は富島玄三なのかも知れませんね。