ドラマ「先に生まれただけの僕」の3話でアクティブラーニングと呼ばれる手法が登場しました。
学校再建の切り札ともなりうるこの勉強法…鳴海校長(櫻井翔)と島津先生(瀬戸康史)がそれぞれ授業で披露したのですが、一体どこに違いがあったのでしょうか?
講義経験のある筆者が、鳴海と島津のアクティブラーニングの手法の違いについて読み解いてみました。
もくじ
先に生まれただけの僕 アクティブラーニングの登場シーン
第3話ご視聴いただきありがとうございました😊 今週も皆様のご感想、よかったらお待ちしております💌 #先に生まれただけの僕 pic.twitter.com/aKM2If29qg
— 【公式】ドラマ「先に生まれただけの僕」 (@sakibokuntv) 2017年10月28日
鳴海の授業・新たな勉強法
2話のラストシーンで鳴海校長は及川先生(木下ほうか)に学校を辞めるように仕向けた結果、数学の授業を鳴海が引き受けることになります。鳴海が徹夜で用意した講義は「アクティブラーニング」の手法を取り入れたもの。
鳴海は教団に上がると、マグネットでできた生徒の名札を一枚ずつ張り付け、スタートの枠で囲いだします。
また、スタートの枠とは別に、ゴールの枠も同じ大きさで作り、一つの数式を書きます。
【ルール】
- 数式が解けた人は鳴海に耳打ちし、名札をゴールに入れる。
- 教室内の生徒と自由に解き方を教え合って良い。
- 生徒全員が解けることを目標とする。
- 制限時間は30分。
数人の生徒はすぐに問題を解き、うまく解けない生徒に教えていきます。
最初は順調にいっていたものの、後半になると相談する生徒の雰囲気がだんだん悪くなっていき…
結果、数名の生徒が問題を最後まで解けずに終わり、結果としてアクティブラーニングはうまくいきませんでした。
島津が鳴海に続く
島津はアクティブラーニングの手法をアメリカで学んでおり、その授業ができることを鳴海に打ち明けます。
島津曰く、インストラクショナルデザイン(効率的な教育方法についての研究)と呼ばれる理論がアクティブラーニングには必要とのこと。
今までの校長はアクティブラーニングの手法で教えることを島津に許さなかったようですが、鳴海は積極的に取り入れるように指示を出しました。
島津先生は教団に上がると、「今日、僕は基本的に英語しか喋りません」と語り出し、黒板に英語の構文を書きます。
そして、3つの間違いがある「間違い探し」の用紙を生徒たちに1枚ずつ配ります。
【ルール】
- 生徒はパートナーと英語だけで会話し、間違いを3つ探す。
- 制限時間は10分。
アクティブラーニングは最後までうまくいき、島津の授業は終わります。
※ 映像シーンはありませんでしたが、島津はこの後に構文やその他英語の使い方について解説をしています。(黒板に詳しい解説が書かれているため)
アクティブラーニングの手法とメリット
そもそも、アクティブラーニングとは何なのか?アクティブラーニングとは、簡単に言えば「生徒が能動的に学習に取り組む学習法のこと」です。
元来の授業は、先生が教えて生徒がそれを「受動的(受け身)」に学習するのが一般的であるのに対し、アクティブラーニングは生徒が自分から学ぼうとする意識を引き出すもの。
アクティブラーニングは、ただ知識を深めるだけでなく、ゴールにたどり着くまでの思考力や判断力がついたり、主体性や協働性などを養うことができると言われています。
鳴海と島津のアクティブラーニングの違いは?
鳴海と島津の授業の違いがよくわからなかった視聴者も多いかと思います。島津先生の授業については、全貌が明かされたわけではないので筆者も明確で正しい答えを出せる訳ではありませんが、講義を行ったことがある人間の視点でできる限り解説していきます。
鳴海は「目的」だけを与えたのに対して、島津は「簡単な目的」と「手段」を与えました。
ある意味、鳴海は生徒に「相談」という手段を与えていますが、問題を解くのに必要な公式のような手段は与えていません。
対して島津は「構文」を手段として与えており、生徒たちはそれを使って「間違い探しの間違いを探し、伝える」という目的を与えたのです。
島津の行動が生徒に与えたのは「知りたいという意欲」です。
鳴海の授業は「問題が解けること自体がゴール」でしたよね。
島津の授業も「間違い探しが解けて、相手に伝えることがゴール」だったのか…というと、それは違います。
島津のゴールは飽くまでも英語を使えるようになることがゴール。
「間違い探しの正解を相手に伝えることができたかどうか」は、どちらでも良かったのです。
島津の英語で生徒たちにやらせた10分は、生徒が自発的に行動させるための「意欲」を掻き立てるものです。
間違いを伝えられなかった生徒の気持ちは「どう喋れば良かったの?」という気持ちであり、モヤモヤ状態…つまり、「知りたい!」という意欲が出ている状態なのです。
間違いを正しい方法で伝えられた生徒は「私の伝え方は合っていたのか?」という気持ちになるので、同様に答えを聞きたかったり、別の伝え方がなかったかなども知りたい…
こんな「知りたい」という受け皿を持った生徒に対して、最後に島津は元来通りに講義をしているわけですね。
生徒の意識がアクティブになって、パスを欲しがっている脳に、島津がキラーパスをした形になっている…だから、生徒たちは島津の授業を楽しく受けることができたというわけです。
鳴海のアクティブラーニングは正しくなかったのか?
鳴海の講義が悪かったかというと、個人的にはそれほど悪いものではなかったと思っています。生徒たちが自発的に動き、協調して働くことになるので社会で必要な能力も向上させるやり方である点で効果があるかもしれません。
ただ、「実際に生徒の頭の中がアクティブになっていたわけではない」ことが問題でした。
自分から行動するため見た目はアクティブなのですが、脳の中は別。
- 「自分だけゴールできなかったらどうしよう…」
- 「わかんねー。やっぱ無理。ってか教え方悪くね?」
- 「拙者、友達がいないでごわす。コポォッ」
といった具合に。
数学で生徒の意識を活発化させるにはどうすれば良いのかまでは筆者にはわかりませんが、そこで大事になるのが「インストラクショナルデザイン」と呼ばれる理論や方法論なのでしょう。
筆者も複数ジャンルの講義を担当したことがありますが、まず講義の始めに解説するのが「なぜ、今回の講義で学ぶ必要があるのか?」「講義を学んだ後にどんなメリットがあるのか?」です。
その報酬のために、講義を受けている人たちは目の色を変えて講義に熱中してくれるのです。
島津先生は生徒が「英語を勉強する理由」を聞いてきたことに嬉しく感じたのは、まさに「授業を受ける必要性とメリット」を意識し始めたことが、授業を受ける前に必要な第一歩だと考えたからなのです。
まとめ
ドラマ「先に生まれただけの僕」の3話に登場した学習法・アクティブラーニングについてと、鳴海と島津のやり方の違いについて筆者の解釈で解説をしました。「なぜ学校の授業を受ける必要があるのか?」という思いは、筆者も高校生のころに何度も感じてきました。
そして、筆者は数学以外、勉強しませんでした。
今になって感じるのは「あの時勉強しておけば良かった」の一言。
暗記教科を避けに避けてきた私は記憶力が悪く、昨日食べたご飯すら憶えていませんし、高校時代の友人の顔と名前もほぼ一致しなくなりました。
私は上京しており、8年ぶりに高校時代の同級生との同窓会に行ったとき、半分くらいの友人に「ごめん、名前覚えてないんよ…」と言わなければならなかったのは本当に苦しかった…
高校生は今隣に居てくれている友人の名前を忘れないためにも「記憶力」を養い、社会で騙されないように「論理力」を養っておくことをオススメします。
そんなことを教えてくれるドラマ「先に生まれただけの僕」は、少し無理やり感がある内容ですが、とてもためになる作品だと思います。
5話で話題となった「ペップトーク」についてはこちらで解説しています。
→先に生まれただけの僕 ペップトークがすごい!5話のあらすじと考察まとめ【動画付き】