新ドラマ『あなたには渡さない』が、2018年11月10日(土)から始まります。
作家・連城三紀彦さんの小説「隠れ菊」を原作に、男女4人のドロドロ愛憎劇が描かれます。
1話では、愛人・多衣(水野美紀)が、本妻・通子(木村佳乃)に向かって「私、御主人をいただきにきました」と堂々宣戦布告。
当記事では、新ドラマ『あなたには渡さない』1話のあらすじを原作小説からネタバレしてまとめています。
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『あなたには渡さない』1話のあらすじを原作ネタバレ
御主人をいただきに参りました
上島通子(木村佳乃)は、料亭「花ずみ」の板前・旬平(萩原聖人)と結婚して17年。
現在は、2人の子供を持つ専業主婦で39歳。
姑の菊は「花ずみ」の女将でしたが、通子を店に近付けることはありませんでした。
菊は誰からも愛される完璧な女性でしたが、別の顔も持っていた様子。
そんな菊は、1年前に“くも膜下出血”で、わずかな時間の内に無くなりました。
ある日、通子は、旬平から「金沢から“笹流れ”の主人が出てくるから迎えに行ってくれ」と言われます。
しかし通子は、その主人と会ったことも電話でしゃべったこともありません。
旬平は「多分、向こうはわかるはずだ」と意味ありげなセリフ。
通子は、待ち合わせ時間の正午に駅に行きましたが、40分を過ぎても相手は現れません、
何かのミスだろうから「花ずみ」に電話しようと電話台に向かった時、後ろから声をかけられます。
「すみません、花ずみの奥様ですね」
通子がふりかえると、地味な和服姿の女(水野美紀)が立っています。
「金沢の矢萩商店から参りました。うちのお酒のことでは、そう……もう六年もご主人にお世話になって」
通子は“造り酒屋の主人”と聞いてぼんやりとした初老の男を想像していたので、女のやわらかい顔や微笑の何かが間違っている気がしました。
そしてその女性は通子より10分も早く来て、ずっと通子が振り向くのを待っていたという。
通子が「45分もですか?」と驚くと、「だって6年も奥さんが振り返るのを待っていたんです。今更4、50分待ったからって」と女。
さらに「本当に後ろを振り返らないんですね。6年前にご主人がおっしゃったんです、一度前を向いたらずっとそのままで、背中ばかり見せられてる気がするって」と言いました。
通子とその女性は、通子の車に乗りました。
通子は「助手席に座ってもらえれば、話せますよ」と言いますが、「初めての人と横顔のまま話すのも……」と女。
結局、駅の表玄関近くに建つシティホテルのカフェテリアを通子が選びました。
通子は女を見て、ほとんど素顔であることに驚愕します。
旬平は電話でこの笹流れの主人のことは全部省略しました、名前も、女であることも、こんな美人であることも……。
改札口で待っている時、通行人の目を奪っていたのは、自分ではなく、すぐ後ろに立っていた場違いに華やかな和服の女だったのです。
車を駐車場に入れた通子が、ホテルのロビーに行っても、女はいませんでした。
先に行っておいてくださいと告げたはずなのに。
2、3分後、女は華やかな花束を持って、登場。
「女将さんの一周忌だから、後で花ずみの仏壇に飾らせてもらおうと思って」
通子とその女は、喫茶店に入って窓際の席に向かい合って座りました。
女は矢萩多衣という名前で、通子より2歳半年上でしたが、成熟している一方で肌は若く光っています。
驚くべきことに、亡き姑の菊は、多衣のところに年に2、3度は遊びに行っていたらしい。
菊は、仕事の愚痴を聞いてくれる優しい嫁がいないから、わざわざ金沢まで愚痴を言いに行っていたに違いない、と思う通子。
多衣が今している帯も、菊からもらったという。
多衣は「奥さんって、六年前に見た今切の関所に置いてある人形に似てるんです」と言います。
それは、女の体を検問する「改め女」の人形。
通子:「その怖い顔が私に似てたんですか?」
多衣:「ええ、だって今にも私の着物をはぎ取って裸にして、私の体の芯まで検めようとしている目でしたもの」
多衣は一呼吸置き、ゆっくり顔を上げました。
「私、ご主人をいただきに参りました」
多衣は、六年前に旬平に一目惚れした時から、ずっと本気だったと言います。
そして、旬平との初めての会話から、初めての夜のことまで赤裸々に話すのでした。
その後、多衣は、旬平の署名捺印された「離婚届」を通子の前に出しました。
さらに、菊が自分が亡くなったら、多衣に旬平と結婚してほしいという遺言を残したことも告げます。
「今、言ったことは本当なんですね、死人に口なしだからって嘘をついたなら、私、本当に怒りますよ!」と通子。
透子は離婚届を封筒に戻し、それを女の方へ押し返しました。
そして「本気なら、主人から渡すように言ってください。あなたとじゃなくて主人と話すことですから」と毅然とした態度。
愛人の不意打ちにも冷静な反応しか見せない通子に腹を立てたのか、多衣は「私、奥さんのこと嫌いです。そういう顔も知っていよいよ嫌いになったわ。本当に嫌な女だわ。ただの嫉妬じゃなくて、心底憎んでますよ。だって嫉妬しようにも、旬平さんは既に私の物ですからね」と吐き捨てました。
多衣は、まだかぶっていた最後の薄い仮面を破り、言葉通りの激しい憎悪を目に溢れされます。
静かに見つめ返す通子。
多衣はハッと我に返った様子で、また微笑の仮面をつけました。
「今の私、鬼の顔をしてましたでしょう?今のが私の本当の顔なんです」
そう言うと、賭博師が花札を切るような鋭い手つきで、離婚届を通子の方に押し返してきました。
そして「おごるのは失礼のようですから」と言って、通子より先に立ち上がりました。
笠井芯太郎
旬平は、それから四日間、何の連絡もよこしませんでした。
通子は、意地でも解決のために、花ずみに足を運ぶ気はありませんでした。
夫が本当に矢萩多衣が言うように卑怯な男じゃないなら、自分からここへ帰ってきて話すべきだから。
4日間の内に、通子は笠井芯太郎(田中哲司)の会社に電話をかけました。
来週仕事で浜松に行くからその時にと言ってくれた笠井に、自分の方から明日静岡に出るからと言い、新幹線に乗って会社を訪ねたのです。
笠井は、通子の幼馴染で、通子を可愛がってくれた兄貴分のような存在。
通子の結婚が決まった時には「プロポーズが一足遅れた」とがっかりしてくれました。
通子は、笠井に夫と離婚するかもしれないことを話します。
そして「4万円貸してほしい」と頼みました。
4万円の使い道には、往復のの新幹線代も含まれていますが、残りの3万円は使い道は……?
笠井は快く、4万円を貸してくれました。
料亭「花ずみ」に足を踏み入れる
通子は、旬平の妻でありながら一度も足を踏み入れたことのない「花ずみ」に、客として訪れました。
笠井に予約してもらって、代わりに来たのです。
そして3万円は、ここの食事代金として使うためでした。
現在の女将の八重(荻野目慶子)はびっくりましたが、「私が客だということは主人に内緒にして」と通子。
料理が終わった後、主人(旬平)が客室に挨拶に来るので、その時に話そうと思っているのです。
八重によると、今日のお客は通子だけだという。
通子は、ふだん飲まないお酒も飲みました。
しかし一合の酒を飲んだのに酔いは回らず、肌は青白く翳って見えました。
輪島塗の黒い艶に、通子の顔が浮かびましたが、眉を太く書き過ぎて、顔が勝気に怒っています。
通子は酒に指を浸して、眉の端をかすかに拭ってみます。
障子のあく音がしましたが、透子は八重だと思って、顔を上げませんでした。
だから客が通子だと知った瞬間に、夫がどんな反応を見せたのかを見落としてしまい……。
酒のしずくが眉墨を溶かして、黒い火花のように顔に飛び散ってしまいました。
コンパクトで直そうと思い、バッグに手をかけた時にやっと夫の顔に気が付きます。
通子の手はおしぼりで眉墨をぬぐっていましたが、じっと見つめてくる夫の目を通子の目も離しませんでした。
この最初のにらめっこに負けたら終わりという思いがあったから。
通子が「あの人との6年間を話してください」と言うと、旬平は「6年前酒が気に入ってあの女の店を訪ねた。一目惚れだった。俺の方から誘ってその晩、抱いた。ただ体に溺れた、今も溺れている。男が家庭を捨てるには十分な理由だろう」と答えました。
驚くべきことに、旬平は通子が店に来ることを知っていました。
笠井が予約の際に、旬平に物申したのでした。
具体的には「ミッちゃんが心配だから、できれば幸せにしてやってほしい。ミッちゃんは勝気だけど純なところがあるから土下座して頭を下げたらいい」と言ったのです。
もちろんこれらは通子には内緒で、という約束でしたが、旬平は今日は嘘をつきたくなくて正直に通子に話しました。
通子は旬平に「ひどいわ」と言って、多衣だけでなく自分も旬平には一目惚れだったことを告げました。
「そういう言葉があるなら、なぜ言わなかった彼女に」と旬平。
そして離婚を決めた理由のひとつに、通子が強い女だからということがある、と。
通子は「許す」とひとこと言えばいいとわかっていながら、手はバッグに伸びていました。
「こんな美味しいもの食べさせていただいたから、ご祝儀を出させてもらうわ」
通子はテーブルの上に、自分が署名捺印した離婚届の入った封筒を置きました(保証人は笠井)。
「やっぱり振り返ってはくれなかったんだ。君はやはり強い女だ」とつぶやく旬平。
花ずみの女将をやることが離婚の条件
旬平は「生活費や養育費については、出来る限りのことをさせてもらう」と言いますが、「私が明日にでも働きに出ますから」と通子。
旬平:「働くってもう仕事を決めたのか?:
通子:「この花ずみの女将をやらせていただきます」
通子は、矢萩多衣が「女将さんまでが私と旬平さんの結婚を喜んでくれていた」と言った時から、おぼろげに決心はついていました。
旬平は「他の条件なら何でものむから、女将のことなど忘れて俺と離婚してくれ」と頭を下げますが、「いいえ、それだけが条件です」と通子。
通子が「あの女が承知しないんですか?」と聞くと、「いや。多衣は簡単に承知するだろう。あいつも同じ条件を出している。お前なら花ずみの女将にふさわしいかもしれないと」と旬平。
一瞬、聞き間違いかと思う通子。
多衣は「奥さんならきっと何かをやる、失敗するにせよ成功するにせよ何か大きなことをやる」と言ったのだそう。
通子:「ではなぜあなただけが反対するんですか?あなたは私のことを一番知らない人だわ。一度だってわたしを振り返らなかったもの」
旬平:「俺が振り返らないと言って攻めながら、自分の方こそ振り返らないお前に腹を立ててる」
通子:「振り返ったわ。18年の全てを振り返らなければ離婚なんて決心できなかったわ」
旬平:「昔の俺ではなく、今の俺を振り返ったらどうなんだ?」
旬平は通子の手を引っぱって、廊下を引きずっていきました。
そして暗い障子のひとつを開けました。
「俺が怒れる筋合いじゃないんだ。でも俺は怒ってる」
もう一度繰り返した旬平の顔は、怒っているというより痛みでも走ったかのように辛そうでした。
旬平は、実は「花ずみ」は倒産同然で、通子が最後の客だったことを告げました。
衝撃的な事実に、驚く通子。
「何も言うつもりはなかったんだ。お前には何も言わず、離婚後も今まで通り何とか生活費を工面して渡し続けようと思っていた」と旬平。
そこに八重が現れました。
「私はただの偽装結婚と聞いて、奥さんは全部を知ってると思って……あの離婚届に判を押したんです」
「偽装?」と驚く通子。
「はい、倒産した場合の借金を奥さんが背負わなくてもいいようにと。夫婦のままだと奥さんに迷惑がかかるからと」
通子が「あの離婚届が偽装だっていうんですか?」と聞くと「あの女とのことは全部本当だ。だが、俺が離婚を決意したのはあの女のことよりも……」と旬平。
通子は旬平の頬を引っぱたきました。
その後、通子は金沢へ多衣に会いにいきました。
そして旬平の署名捺印入りの婚姻届けを六千万で買うように、迫るのでした。
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