ドラマ「乱反射」【妻夫木聡&井上真央】原作あらすじネタバレ!二歳児を殺したのは誰?

貫井徳郎さんの傑作ミステリー小説の実写化『乱反射』が、2018年9月22日(土)に、テレビ朝日系にて放送されます。

妻夫木聡さんと井上真央さんが初共演で夫婦役を演じることで、話題を呼んでいます。

「重く衝撃的なラスト」で有名な本作を、お2人がどんなふうに演じてくれるのか楽しみです。

当記事では、スペシャルドラマ『乱反射』あらすじの原作ネタバレをまとめています。


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スペシャルドラマ『乱反射』の原作とは?


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『乱反射』の原作は、貫井徳郎(ぬくい・とくろう)さんの同名小説。

『週刊朝日』(朝日新聞出版)にて、2007年8月17日号から2008年10月3日号まで連載されました。

第63回日本推理作家協会賞を受賞。


物語は-44章からスタートして、「たくさんの自覚亡き加害者」が登場。

0章で、「加山夫婦(井上真央&妻夫木聡)の2歳児が不運な事故で死亡する事件」が起こります。

その後も物語は続き、ここからは「子どもを亡くした新聞記者の父親が、真犯人を探す物語」へと変化していきます。

スペシャルドラマ『乱反射』の放送日と放送時間は?



スペシャルドラマ『乱反射』の放送日は2018年9月22日(土)で、放送時間は22:15から翌0時8分まで。

メ〜テレ開局55周年記念ドラマとして、同局の制作により、テレビ朝日系で放映予定。

主演は妻夫木聡さんと井上真央さん。

小説「乱反射」キャスト一覧

小説「乱反射」に出てくる主な登場人物を紹介します。

ドラマ版で演じるキャストは、右側に書いています(ドラマには登場しない人物や、未発表の場合は書いていません)。

加山家


加山聡(かやま・さとし):妻夫木聡



新聞記者。妻・光恵(井上真央)と2歳の息子・翔太と2人暮らし。被害者の父。


加山光恵(かやま・みつえ):井上真央



※井上真央さんの隣にいるのが、健太役の小岸洸琉くん。

専業主婦。姑との仲があまり良くない。事件当日は互いに心を通わせますが……。


加山健太(かやま・けんた):小岸洸琉


不運な事故で死亡する2歳児。

ドラマの名前は、翔太。


加山路子(かやま・みちこ):原日出子


聡の母で、59才。

あまり見舞いに来ない息子の妻・光恵に不満を感じている。


加山彰:大鷹明良


聡の父で、64才。

脳梗塞で倒れ、三蔵中央病院に入院している。


新聞社


海老沢一也:北村有起哉


東都新聞社のデスク。

加山聡(妻夫木聡)の上司。


大塚かなえ:相楽樹


東都新聞社の記者。

加山聡(妻夫木聡)の後輩。

原作には出てきません。


自覚なき加害者


足達道洋(あだち・みつひろ): 萩原聖人


「石橋造園土木」勤務。

5年に1度の街路樹の診断を担当。

極度の潔癖症。


石橋忠行(いしばし・ただゆき):鶴見辰吾(つるみ・しんご)


足達道洋(萩原聖人)の上司。

道洋を信頼して、息子のように可愛がっている。


田丸ハナ(たまる・ハナ):梅沢昌代


50代の主婦。

夫が高収入で裕福な暮らしをしている。

道路の拡幅工事で街路樹が伐採されると聞き、反対運動をしようと考える。

娘に人生を否定されて、余計に反対運動に固執する。


粕谷静江:筒井真理子


街路樹伐採の反対運動を起こす。


三隅幸造(みすみ・こうぞう):田山涼成


愛犬のフンを腰が痛いからという理由で始末しない老人。


久米川治昭(くめがわ・はるあき):三浦貴大


アルバイト当直医。

責任を負いたくない内科医師。

3つの病院でアルバイトの掛け持ちをしている。


小林麟太郎(こばやし・りんたろう):芹澤興人


街路樹の管理をする市役所職員。


上村育夫:光石研


小林麟太郎の上司。


安西寛(あんざい・ひろし)


虚弱体質の大学生。

混雑する待合室が嫌で、夜間救急を利用。


榎田克子(えのきだ・かつこ)


自分より可愛く、自分よりスタイルが良い5歳年下の高校生の妹・麗美(れいみ)にコンプレックスを抱いている。

軽自動車でさえ上手く車庫入れができなかったのに、妹の希望により買い換えられたSUVでは尚更上手くできずイライラ。

小説「乱反射」ネタバレ

ドラマ『乱反射』の原作小説をネタバレしていきます。

加山夫婦


加山聡は10年のキャリアを持つ新聞記者。

妻・光恵(井上真央)との間に、2歳の息子・健太(小岸洸琉)と生活。


聡は母・路子(原日出子)の過剰な愛情が苦手で、あまり実家には寄りついていません。

光恵も義母・路子のことが苦手。


そんなある日、加山聡の父・彰(大鷹明良)が脳卒中で倒れます。

光恵は「私は2歳の健太の世話で手一杯。お義父さんの世話まで出来ない。デイケアセンターに頼みたい」と言います。

加山聡はつい光恵を責めてしまい、他人の手を借りるという光恵の案を却下してしまいます。


不幸な事故


その日は強い風が吹いていました。

光恵は、義父の見舞いの帰り道、夕方の薄暗い道でベビーカーを押していました。

ベビーカーには2歳の息子・健太がいました。


不意に、ひときわ強い風が吹き抜けて、目をつむる光恵。

その後、何か巨大な質量が迫ってくる気配。


その正体に見当がつかず、光恵はついに目を開けました。

すると、とうてい信じがたい光景が網膜に映ります。


街路樹が光恵に向かって、倒れてきたのです。

街路樹は息子の健太に直撃、健太は頭から血を流しています。


健太が死亡。でも何故?


健太はすぐに救急車で運ばれましたが、病院をたらいまわしにされたり渋滞に巻き込まれた結果、死亡。


加山聡は、そもそもなぜ光恵と健太が遅い時間外を歩いていたのか不思議でしたが、その日に限って路子(原日出子)が引き留めていたのでした。

皮肉にも、今まで折り合いが悪かった光恵と路子が心を通わせて何時間もしゃべってしまったのです。


路子は加山聡の前で泣き崩れ、自分が引き留めなければこんなことにはならなかったと幾度も繰り言を口にしました。

しかし路子を非難したところで、健太は帰ってきません。


加山聡は、上司である海老沢一也(北村有起哉)の勧めで「何故、健太が死んだのか」探ることに。

海老沢:「これは人災だ。街路樹なんて、きちんと手入れされていればそうそう倒れるもんじゃない。まして台風が来ていたわけじゃなく、単なる強風で倒れちまったんだ。行政の怠慢があったとしか思えない。健太君の死に責任ある奴が、どこかに潜んでいるんだよ。それなのに、お前、ただ泣いてるだけでいいのか」


海老沢は加山聡を元気付ける目的で言ったのですが、この発言が元で聡は後に暴走することに。


まずは警察へ


加山聡は、まずは所轄の警察署を訪ねました。

新聞記者としてではなく、事故被害者の遺族として、担当刑事に面会を求めました。


刑事は事故当時、“健太に向かって倒れた木”だけが検査を受けていなかったことを教えてくれました。

他の木は5年に一度の定期検査を受けていたのです。


加山聡は「検査を怠った?どうしてです」とかみつきますが、捜査中ということでそれ以上は話してもらえませんでした。

加山聡はその足で市庁舎に行き、街路樹の診断をしたのが「石橋造園土木」であることを聞き出しました。


健太を殺したのは足達道洋?


足立道洋(萩原聖人)は「石橋造園土木」勤務の造園業者で、5年に一度の街路樹診断を担当していました。

しかし足立は、犬のフンが大量に落ちている樹木(=健太を下敷きにした樹木)の診断を避けてしまいました。


足達は極度の潔癖症を患っていたのです。

その樹木は“根腐れ”の状態で、もし足達がちゃんと検査していれば事故は防げたでしょう。


足達は自分の罪を認めて、聡に謝罪。

足達の上司の石橋忠行(鶴見慎吾)は、道路は拡幅計画があり、近い内に街路樹は伐採される予定で、それもあって足達が急いで診断する必要がないと判断したと弁護。

加山聡は話を聞くほどに、“不運”という形容が頭をちらつくのでした。


加山聡は「あなたの判断ミスを呪い続けます」と言って、足達は「私も小さい子供の命を奪ってしまった罪を感じながら生きていくつもりです」と答えました。


4人の自覚なき加害者たち


加山聡のその後の調べで、健太の死には4人の自覚なき加害者がいたことが判明。

赤字のところが健太の死に関わった部分です。

小林麟太郎(こばやし・りんたろう)


市の生活環境課の小林麟太郎は、道路に犬のフンが落ちているという苦情があったのに、フンの処理を怠りました。

理由はそれを見ていた子供たちにバカにされたから。


久米川治昭(くめがわ・はるあき)


久米川治昭(三浦貴大)は、アルバイト当直医。

健太の事故現場から、目と鼻の先にある病院に勤務。


責任を負いたくない久米川は、内科医である自分では、脳から出血している健太を診られないという理由だけで、受け入れ拒否。

外科医を呼び出すという手段もあったのに、それをしませんでした。


結果、健太の乗っている救急車は何時間も受け入れ先を探して、走ることになりました。

医者はもし健太がもっと早く手術を受けていれば、助かった可能性が高いと言っていました。


安西寛(あんざい・ひろし)


久米川が健太を受け入れ拒否した理由は、もうひとつありました。

それは、事故の夜の患者が多かったから。


しかし患者は全て風邪程度の軽症だったという(救急病院の夜間診療なのに)。

安西寛という虚弱体質の学生が夜間はすいているという理由で利用していて、その噂が他の学生にも広まったのが原因でした。


田丸ハナ(たまる・ハナ)


田丸ハナ(梅沢昌代)は、道路の拡幅工事で街路樹が伐採されると聞き、反対運動をしようと考えます。

有閑マダムのハナは、娘に人生を否定されて、余計に反対運動に固執することに。

それを手伝ったのが、粕谷静江(筒井真理子)。


ハナと静江の妨害のせいで、街路樹の検査が滞りました。

ハナと静江に何度も追い返されなければ、街路樹の診断は上手くいっていたでしょう。

そしたら木が弱っていたことももっと早く判明し、健太は死ななかったはず。


加害者なのに逆上?


4人の自覚なき加害者たちは“健太殺しの罪”に関与しているにもかかわらず、例外なく逆上。

己の罪を悔いるどころか、自分は悪くないと堂々と開き直りました。


加山聡はその反応に驚き、適切な追求ができなくなります。

申し訳ないのひとことは、当然聞けると思っていたから。

そして紛れもなく健太を殺した犯人であるにもかかわらず、それを問う法律はありません。


加山は、自分の理性を恨めしく思います。

本当はぶん殴ってやりたかったのですが、それが出来ない時点で引き下がらざるを得ません。


いったい誰を責めればいいのか、誰に健太を喪った悲しみをぶつければいいのか。


加山聡は途方にくれます。

これは単なる事故ではなく、海老沢の言う通り人災だと思う。


にもかかわらず、事故の原因を作った人たちはただ「自分は悪くない」と繰り返すばかり。

加山聡の哀しみは宙に浮き、どこにも落ち着けることができません。


加山聡が海老沢に今までのことを話す


加山聡:「いろいろわかってきました。わかるほどに辛くなってきましたが」

海老沢:「話を聞こうじゃないか」

加山聡は求められるままに、これまで知りえたことを話しました。


事故の責任は確かに街路樹を点検しなかった足達にあるけれど、それが病気に起因していたこと。

市の担当者が些細な理由から仕事を怠ったこと、事故現場から一番近い病院の当直医が、全力を尽くして健太を助けてくれなかったこと。

医師に受け入れ拒否の口実を与えた、夜間診療時間帯の混雑を引き起こした原因の学生もまた、利己的な主張を述べたこと、街路樹診断を妨げた主婦たちは、一方的に自己正当化をはかったこと。


加山聡は、彼らひとりひとりの責任は小さくても、決してゼロではないことをなんとしても知って欲しかったのに、言葉が届かないもどかしさが、加山聡を強くうちのめしています。


海老沢は「記事にしてみるか?」と言います。

加山聡は「やらせてください」と海老沢に感謝。

新聞記者である加山聡は、記事を通しておかしいことをおかしいと訴えることができるのです。


「ただし責任を問う対象は行政までにしとけよ」と釘を刺す海老沢。

その意見にはすぐには頷きかねる加山聡。


家に帰ると、光恵がテレビでヨーロッパの風景を見ていました。

光恵は健太が亡くなってから、ずっと寝込んでいます。


足達が逮捕


警察から、足達が“業務上過失致死”で逮捕されたという知らせがありました。

加山:「足達さんだけですか?市の担当部署の責任者(小林麟太郎)はなんでしょうか?」

警察:「市の責任は問えません」


加山が「じゃあ、あの事故は足達さんだけの責任なのですか?」と聞くと、「こういうケースではむしろ我々より警察の方が力を発揮するんじゃないですか。新聞にはとことん追求して欲しいと思いますよ」と警察。


三隅幸造(みすみ・こうぞう)に辿り着く


加山聡は犬のフンを放置した人物を探すために、聞き込みを開始。


「あなた、犬のフンの始末はきちんとしていますか」

見知らぬ男からいきなりこんな質問をされれば、驚くのも仕方ありません。

今日も、加山聡から糾弾調で質問された女性は、びっくりしていました。


遂に加山聡は、女子高生から、黒いプードルを連れた老人が犬のフンを放置した犯人であることを知らされます。

女子高生から「死んだ子のためにもがんばって。応援してる」と言われて、勇気付けられる加山聡。

責任逃れしか考えない人々ばかりと思っていた世界にも、味方をしてくれる人がいたのです。


加山聡は、黒いトイプードルを連れた老人=三隅幸造を探します。

光恵からなにをしているのかたすねられて、事情を説明すると、光恵の目に強い光が戻りました。

自分も男を探すと、強く希望。


光恵の態度に、危ういものを感じる加山聡。

自分がそうであるからこそ、光恵が怒りを支えに生きて行こうとするのがよくわかるから。

光恵が男を殺してしまう可能性まで加山聡は案じなければなりませんでした。


以下のことを条件に、光恵も一緒に男を探すことを許可してやります。

  • 男を見つけたら、話しかけずにそのまま尾行して家を確認。
  • 男を訪ねる時には、聡も一緒。
  • 絶対に光恵ひとりで男に話しかけてはいけない。


加山聡にとって、フンを放置した相手こそ、最も憎むべき相手でした。

健太の死に少しずつ責任がある者たちももちろん憎いが、フンさえなけらば、事故そのものが起きなかったと思えてなりません。


そして、男はみつかりました。

光恵から「みつけたわ」と電話がかかってきたのです。


加藤聡と光恵は、今日も愛犬・クマのフンを放置している三隅幸造に話しかけます。

自分たちが街路樹で死んだ2歳児の親で、街路樹の診断が三隅が放置したフンのせいで出来なかったことを告げました。


三隅幸造も自分の非を認めない


しかし三隅は断固として、自分の非を認めませんでした。

潔癖症でフンのある樹木に近寄れなかった足達道洋に対して「病気だったら、何でも許されるのか」と罵りました。

そして自分は腰が悪いから、かがんでフンを片付けられないと主張。


「腰がなんだっていうのよ!あんたが健太を殺したのよ!」と光恵。

それでも三隅は、己の非をどうしても認められませんでした。

「人殺し」だという非難をどうして受け入れることが出来ようか。


三隅は既に定年退職していましたが、長年築き上げた社会的地位がありました。

三隅は自分が腰を痛めた理由は、何もない時代をここまで豊かにするためがむしゃらに働いたせいだと主張。


「話をごまかさないでよ!」と半狂乱で叫ぶ光恵。

それとは対照的に、光恵をおさえる加山聡の表情には諦めにも似た色が見られます。


三隅はその場を立ち去りながら、重苦しい気持ちはいっこうに晴れませんでした。

フンを放置しておくことに、今まで両親の呵責を覚えなかったわけではありませんでした。


しかし愛犬・クマを散歩させないわけにはいかないし、フンをするなとも言えない。

そして、かがんだ時の腰の激痛にも耐えられませんでした。

三隅は必死で自己正当化しますが、人ひとりが死んだという事実の前には簡単に吹き飛びました。


家に帰った三隅は、全てを妻に話しました。

昔から何かあったら妻に聞いてもらうのが習慣で、妻は三隅は悪くないといつも慰めてくれたから。


しかし三隅の「俺は悪くないだろう?」に対する妻の答えは「さあ、どうかしら」。

さらに妻は「あなた晩節を汚しましたね」と信じられない一言を吐きました。

三隅は、五十年近くにわたって従順に自分に仕えてきたはずの妻が、いつの間にか別人になったような恐怖をおぼえました。


怒りの持っていき場がない


去っていく老人の背中を睨む光恵は、これまで聡が見たこともない恐ろしい形相をしていました。

半狂乱どころか、怒りのあまり本当に発狂してしまったのではないかと危ぶむほど。

「殺してやる!あの爺さんを殺してやる!」


以前の光恵はこんなことを言う女ではありませんでした。

いついかなる時でも冷静な光恵に助けられたことが多々あり、加山聡は妻を尊敬していたのに……。


加山聡は妻の気持ちが完全に理解できるだけに、押さえつけなければなりませんでした。

加山聡は殺してやりたいのは自分も同じだが、それはムリだと光恵に言い聞かせます。


「じゃあ、訴えてやる!」と光恵。

加山聡は、訴えても裁判には持ち込めないことを言い聞かせます。


光恵:「そんな!人殺しなのに自分が悪いことをしたって、わからせてやることもできないの?」

加山聡:「それが現実なんだよ。誰も自分が悪いなんて思ってないんだよ」


光恵はしばし唖然とした後に、号泣。

加山聡は、どうにもならない孤独が、光恵を泣かせたのだと感じました。


事故原因を書くなら市までにしておけと海老沢は言いましたが、書くならすべてを書かなければならないと加山聡は思い直していました。

健太の死に誰よりも憤ってくれた海老沢ならば、きっと理解してくれるだろうと予想していました。


しかし海老沢は反対。

「新聞は、犯罪者じゃない一般市民を批判したりしちゃまずいんだよ」

加山:「個人名を出すつもりはありません」

海老沢:「個人名を出さなくたって、書かれた側はわかる」

加山:「そんな……」

海老沢:「俺はお前に気持ちがわかるからこそ、記事にすることを許可した。市の責任を追及しろと言ったんだ。していいことと悪いことがあることを頭を冷やして考えてほしい」

加山:「つまり海老沢さんは、おれの力にはなってくれないということですね」


言ってはいけないと思いつつも、口が勝手に動いてしまいました。

海老沢が親身になってくれているのはわかっているのに、言葉になるのは荒々しい感情だけでした。

加山聡はやり切れない思いを抱えながら、編集部を出ました。


足達の初公判


足達の起訴は早く、国選弁護士だけで公判にのぞむという。

少なくとも、足達は言い逃れをする気はない様子。


初公判の日、足達は休みをとって光恵とともに地方裁判所へ。

法廷に入ってきた足達は加山たちをみつけると、深々とお辞儀。

足達は事実を争わず、己の罪を認めていました。


公判終了後、同じく裁判を見にきていた足達の上司の石橋(鶴見慎吾)から、足達の家庭が破綻したことを知らされました。

足達の妻は、子供を連れて実家に帰ったという。


事故は加山たちだけでなく、足達からも様々なものを奪ったのです。

加山はなおいっそう、事故の真実を明らかにしなければという思いを強くします。


ホームページを立ち上げる


加山聡はホームページを立ち上げることにしました。

仕事として事故の背景を記事にしようとしたら、許可が得られなかったのです。

さすがに個人名をさらす気はありませんでしたが、それでも責任逃れをした人たちを思うさま糾弾してやれると思うと、心がざわめきました。


地道な努力を重ねるうちに、訪問者は徐々に増えていきました。

加山聡はあえて、メールアドレスを公開していました。

ページを呼んだ感想が聞きたかったからです。


アクセス数が増えるにつれて、感想メールも増えてきました。

そのほとんどが励ましメールで、加山聡の心を慰めてくれました。


批判メールが来た


しかしそれも最初のうちだけでした。

以下のような批判メールも来るようになったのです。

子供を喪って辛い気持ちは理解できる。

しかしだからといって、ほとんど罪のない人たちに怒りの矛先を向けるのはどうか。

そんなことを言われたら大半の人が犯罪者になってしまう。

平穏な人生を送っている人たちの生活をかき乱すのは、常識人のすることではない。

加山聡はショックを受けるよりも、むしろ唖然とした心地でした。

批判メールは、全体の半数近くを占めていました。


加山聡はこれが世間の意見なのか、と愕然とします。

正しいのは「自分は悪くない」と主張した人たちであり、彼らの糾弾する加山聡の態度は“言いがかり”なのか?


加山聡は、自分が世間の人々の痛いところを突いたのだと理解。

加山聡が糾弾した“些細な自分勝手”は誰でもしていること。

その結果が、たまたま人ひとりの死の結びついたから特別に見えるだけで、きっと誰もが毎日やっていることなのです。


それを“罪悪”と糾弾した加山は、普通に生きる人の神経を逆なでしたのでしょう。

「お前は何様だ」という反発が、批判メールの背後に透けて見えるかのようです。


事故当日に渋滞を作り出した人間がいたことが判明


そんなある日、加山聡は一通のメールを受け取ります。

なんと健太の事故の当日、渋滞を作り出した人間がいるというのです。


加山の薄れかけていた気力が、わすかに戻ってきました。

糾弾すべき相手がいる限り、まだ前に進めると思うのでした。


榎田克子(えのきだ・かつこ)に辿り着く


加山聡は、榎田克子に会いにいきました。


渋滞の原因は、克子が車を道路に置きっぱなしにしたまま、家に入ってしまったからでした。

克子は、妹のわがままで買い換えられたSUVでは上手く車庫入れできず苛立って、車を置きっぱなしにしたのです。


克子:「私があなたのお子さんを殺したんじゃありません」

加山:「あなたもですか。やっぱりあなたも謝ってくれないんですか」


加山は「誰も謝ってくれない。誰も自分の罪を認めてくれない。誰かひとりでも謝ってくれたら、ここまでの絶望感を味わわなかったかもしれない」と言って、冷笑を顔に張り付けたまま泣きました。


克子は「失礼します」と言ってその場を去り、可能な限り高い花束を買って、事故現場に供えにいきました。

「ごめんなさい、ごめんなさい」と、加山に言うべきだった言葉を空しく何度も繰り返します。


ホームページを閉鎖


もはや加山聡にとって、同情メールを読むこと以外、生きる道は見出せませんでした。

そんなある日、加山聡は上司の海老沢に喫茶店に誘われました。

「ホームページを続けたいなら会社を辞めてからやれ、社に残りたいなら、ページを閉じろ」と言う海老沢。


新聞社の上層部に加山聡のホームページのことがバレて、かばいだて出来なくなったのです。

「俺が余計なことを言ったからだ、事故は人災だとお前を焚きつけたからいけなかったんだ」と自分を責める海老沢。

「やめてください。海老沢さんを恨んだりしません。俺はまだ会社を辞めたくありません」と加山聡。


加山の目には、自分を取り囲む分厚い壁が見えていました。

健太の死に関係ある者からは謝罪を引き出せず、その理不尽さを社会に訴えようとしても手段を封じ込められるのです。


加山聡こそが健太を殺した犯人?


加山聡はコンビニに行って、ウーロン茶とお握りを買いました。

おにぎりの包装を破って捨てようとした時、ある光景が浮かびました。


それは健太を連れて、最後の旅行に行った際の出来事でした。

溜まったゴミを家の中に置いておくわけにいかず、やむなく車に積んで出発。

そして途中のサービスエリアで「一回だけ」と言い訳して、小さいゴミ箱に無理矢理押し込んだのです。

誰でもやっていることだから、一回ぐらいはいいだろう、と自分に言い訳をして。


「ああああああああああ」

加山聡の体はがくがくと震えはじめ、口からは意味をなさない声が漏れます。


あの時の自分は誰かに似てはないか?

そう、加山聡が恨み、心の中で糾弾し続けた人々と全く同じ。

加山もまた、彼らと同種の人間だったのです。


「あああああああああ」

声は漏れ続け、体の震えはますます激しくなりました。

心は膨張し続ける狂おしい後悔に占領されていました。


自覚がないという点も含めて、加山は彼らにそっくりでした。

「おれだったのか。おれが健太を殺したのか」

両手をみつめながら、加山聡は力尽きるまで絶叫し続けました。


健太はもういない


その後、加山聡に絵葉書が届きました。

手に取って裏返すと、風景写真になっています。


そこには「ホームページ、閉じてしまったのですね。悲しみを乗り越えるのは時間がかかるでしょうが、これからもがんばってください」と書かれていました。


久しぶりに励まされ、冷え切った加山聡の心がほんの少しだけ温まりました。

もう一度裏返し、今度はじっくりと風景写真を見ます。


それはどこかの岬の写真でした。

青い海に、夕日が照り映えています。

加山聡はその素朴さに、こころを打たれます。

光恵に絵葉書を見せると、「嬉しいね」と感想を口にしました。


翌日、会社から戻ると、光恵が「ねえ」と話しかけてきました。

光恵から話しかけてくるのは珍しい。


加山聡と光恵は、まるで倦怠期の夫婦のように会話がなくなっていました。

ひとりでいるときよち、ふたりきりになったほうが、互いに健太の不在を強く意識してしまうから。


「あたし、ここに行ってみたい。一緒に行こうよ」

光恵は絵葉書の写真を指差して、そう提案。


光恵がどこかに行きたいと言うのは健太が死んで以来初めてのことで、加山聡は嬉しくなりました。

沖縄であることは間違いなさそうなので、沖縄へ。


しかし絵葉書の場所をみつけるのは、無謀ともいえる計画でした。

那覇でもないし、万座毛でもない。


絵葉書屋さんに聞くと「これ、与那国だよ」とあっさり教えてくれました。

与那国島とは、日本の再西端です。


加山聡と光恵は、絵葉書と同じ光景を目にすることが出来ました。

「健太はもういないんだな」

加山聡がつぶやくと、光恵は海の果てを見つけたままうなづきました。

まとめ

スペシャルドラマ『乱反射』の原作ネタバレをまとめました。

ドラマでは妻夫木聡さんと井上真央さんの演技で、きっと感動的なものに仕上がるでしょう。


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