『悪魔の手毬唄~金田一耕助、ふたたび~』が、2019年12月21日(土)に放送されます(夜9:15~11:25/フジテレビ系)。
金田一耕助役はNEWSの加藤シゲアキさんが、金田一のバディとなる警部役を歴代の金田一役で有名な古谷一行さんが演じます。
女同士の醜い争いの影に隠れるのは、詐欺師の恩田育三?
キーワードは「一人二役」。
当記事では『悪魔の手毬唄2019』の
- 原作の結末のネタバレ
- 黒幕(犯人)の犯行の全容と動機
もくじ
- 1 『悪魔の手毬唄2019』の放送日と原作
- 2 『悪魔の手毬唄2019』人物相関図
- 3 『悪魔の手毬唄2019』公式あらすじ
- 4 『悪魔の手毬唄2019』の結末を原作ネタバレ
- 4.1 23年前の未解決事件
- 4.2 恩田育三の娘・大空ゆかり
- 4.3 村のロミオ・歌名雄
- 4.4 亀の湯の娘・里子
- 4.5 金田一が多々良放庵から手紙の代筆を頼まれる
- 4.6 腰が曲がった老婆と放庵の失踪
- 4.7 放庵の一人二役?
- 4.8 第一の殺人
- 4.9 里子が頭巾を脱ぐ
- 4.10 青池源次郎の過去
- 4.11 放庵からの手紙
- 4.12 由良敦子の話
- 4.13 日下部是哉の話
- 4.14 第二の殺人
- 4.15 悪魔の手毬唄
- 4.16 文子の通夜でまたしても驚愕の事実が判明
- 4.17 第三の殺人
- 4.18 黒幕(犯人)の最期
- 4.19 最後の驚愕
- 4.20 23年前の事件の真相
- 4.21 黒幕(犯人)の動機と犯行の一部始終
- 4.22 里子が殺された理由
- 4.23 ラストシーン
- 5 『悪魔の手毬唄2019』感想
- 6 『悪魔の手毬唄2019』の関連記事
『悪魔の手毬唄2019』の放送日と原作
『悪魔の手毬唄2019』の原作は、ホラーミステリー小説界の巨匠・横溝正史さんの著書『悪魔の手毬(まり)唄』(角川文庫) 。
猟奇的連続殺人が、村に伝わる“悪魔の手毬唄”になぞらえて勃発。
それはやがて、23年前の未解決殺人事件へと繋がって行きます。
『悪魔の手毬唄2019』人物相関図
引用元:https://www.fujitv.co.jp/kindaichi_returns/chart.html
『悪魔の手毬唄2019』公式あらすじ
岡山と兵庫の県境にある鬼首村(おにこうべむら)では由良家(ゆらけ)と仁礼家(にれけ)という、二つの名家が対立していた。岡山県警警部・磯川常次郎(古谷一行)の依頼を受け、金田一耕助(加藤シゲアキ)はその村にある亀の湯という温泉宿を訪れる。そこの女主人である青池リカ(寺島しのぶ)は、20年前に起きた悲惨な事件によって夫の源治郎(渡辺大)を亡くしていた。そしてその犯人、恩田幾三はいまだに行方不明だという。ある日、鬼首村出身の人気歌手、大空ゆかり(中条あやみ)が帰郷するということで村中が活気づく中、リカの息子、歌名雄(小瀧望)の婚約者である由良泰子(菅野莉央)が滝つぼで死んでいるのが発見され・・・。
引用元: 悪魔の手毬唄 – フジテレビ
『悪魔の手毬唄2019』の結末を原作ネタバレ
『悪魔の手毬唄2019』の原作ネタバレをします。23年前の未解決事件
金田一耕助(加藤シゲアキ)は、磯川警部(古谷一行)の紹介で岡山県の鬼首村の温泉宿『亀の湯』にやってきた。
女将の青池リカ(寺島しのぶ)は未亡人だが、しっかり者で色気もある。
今回の目的は謎解きではなく、あくまでも静養だった。
ところが磯川の策略で、金田一耕助はまんまと事件に巻き込まれて謎解きをする羽目に。
磯川は、23年前の未解決事件について金田一の意見が聞きたかったのだ。
23年前の事件の概要は、以下の通り。
(ちょっと長いですが、この事件が後の“鬼首村の手毬唄殺人事件”と繋がるので是非しっかり読んでください)
・仁礼家の先代がブドウ栽培を始めて大当たりして、仁礼家優勢に(現在はブドウ酒工場も建てた)。
・焦った由良家の先代は、その頃村にやってきた恩田育三という男が持ち込んだ副業・モール作りに手を出す。
・恩田育三は、年は35、6で金縁眼鏡にちょび髭を生やした好男子。
・恩田は多々羅放庵(石橋蓮司)の屋敷の離れを借りて、月に2~3度だけ村にやって来た。
・その後、温泉宿『亀の湯』の息子の源次郎(渡辺大)が、妻のリカ(寺島しのぶ)、息子の歌名雄(小瀧望)を連れて久しぶりに鬼首村に帰って来た。
・源次郎は恩田が詐欺師であることを見破って「とっちめてやる」と恩田が住む家へ乗り込んだ。
・ところが、源次郎は恩田に殺されてしまった。
・凶器は薪(まき)、死因は後頭部打撲による頭蓋骨折と脳出血。
・源次郎は暖炉裏に首を突っ込んでいる形で発見されて、顔は黒焦げだった。
・顔が黒焦げになった源次郎を発見したのは、源次郎の妻のリカと恩田に離れを貸していた多々羅放庵。
・偶然にも同晩、多々羅放庵の5番目の妻のおりんが家出(その後も戻って来ず)。
・犯人である恩田育三は現在も行方不明。
磯川警部は、この23年前の源次郎殺害事件について、一つの疑惑を持っていた。
それは、被害者と加害者があべこべではないか?ということ。
・第一に、なぜ加害者は被害者の顔を全く識別できないほど毀損する必要性があったのか。
・第二に、加害者が逃亡した後の足取りがなさすぎる。
つまり殺したのが源次郎で、殺されたのが恩田ではないかと見ているのだ。
もし警部の疑惑が当たっているとすれば、いつか源次郎がこの村に帰ってくるのではないか?というのが警部の持っている唯一の希望だった。
・詐欺師・恩田育三に亭主・源次郎(渡辺大)を殺された悲しき未亡人。
・現在は息子・歌名雄(小瀧 望)と一緒に『亀の湯』を切り盛りしている。
・庄屋の末裔。
・昔から放庵と称して“したい三昧”をやってきた人物。
・親子二代の道楽がたたって現在は家財ゼロ。
・8人の妻を持った人物で、事件当時は5番目の妻・おりんと暮らしていた。
・ところが源次郎が殺された晩、夫婦喧嘩の末におりんは逃げてしまった。
磯川は明らかにリカに気がある様子で、リカのためにも早く事件を解決してあげたいと思っていた。
23年前の源次郎殺人事件の真相はコチラ
恩田育三の娘・大空ゆかり
詐欺を働いて由良家に大損害を与えた恩田育三だが、当時彼の身の回りの世話をしていたのは鍛冶屋(かじや)の娘・別所春江(国生さゆり)だった。
恩田の娘・千恵子を生んだ春江は、村の人々から千恵子(中条あやみ)が「詐欺師の娘」「人殺しの娘」と言われることに耐えかねて、小学生の千恵子を連れて村を出た。
ところが千恵子は、芸名・大空ゆかりとして芸能界で活躍する国民的人気歌手に成長。
抜群のプロポーションと美貌から、“グラマーガール”と呼ばれている。
ゆかりは去年祖母と祖父に“ゆかり御殿”といわれる立派な家を建ててやり、もうすぐ母の春江と一緒に鬼首村に里帰りするという。
村は、大スターの帰還に大興奮状態。
一応『男』である金田一も鼻の下をのばすが、このゆかりの帰郷が恐ろしい連続殺人事件の幕開けになるとは予想さえしなかった。
村のロミオ・歌名雄
鬼首村一の美男子は、青池リカの一人息子・歌名雄(小瀧望)。
村の女性はみんな歌名雄のことが好きだったが、歌名雄は由良泰子(菅野莉央)と恋仲で結婚の約束もしていた。
一方、歌名雄の母・リカの元には、現在地元で圧倒的な勢力を誇る仁礼家の当主・嘉平が頻繁に訪れていた。
嘉平は、自分の娘である仁礼文子(大友花恋)を歌名雄と結婚させたいとリカに申し出る。
リカは「(村の財源であるブドウ畑とブドウ酒工場の主である)嘉平の言うことには逆らえない」と、歌名雄と由良泰子の結婚に反対。
頭に血が上った歌名雄は「俺は絶対に泰ちゃんと結婚する!」とリカに宣言した。
亀の湯の娘・里子
金田一は、まだ一度もリカの娘・里子(大野いと)に会ったことがなかった。
女中のお幹によると、生まれつき心臓が弱く土蔵の中で暮らしているという。
その後、金田一は頭巾を被った里子と会う。
里子は頭から体にかけて赤痣があり、常に頭巾で顔を隠しているのだ。
里子の赤痣の理由は、リカが里子を妊娠中に源次郎の死体を見たショックのせいだと言われている。
里子はそもそもきめ細かい肌の持ち主で、もし痣がなければ相当の美女と思われる。
金田一が多々良放庵から手紙の代筆を頼まれる
金田一は、共同浴場で出会った多々良放庵から、元妻・おりんに出す手紙の代筆を頼まれる。
おりんとは、放庵の5番目の女房。
23年前に夫婦喧嘩の末に出て行ったきりだったが、最近になって「よりを戻したい」という手紙を送ってきたのだ。
金田一は「けっこうなことじゃないですか!」と言って、高齢で右手が不自由な放庵に代わっておりんへの手紙を書いた。
腰が曲がった老婆と放庵の失踪
その後、金田一は千人峠で一人の腰が曲がった老婆とすれ違う。
老婆はわざわざ「おりんでございます」と名乗った。
金田一は「おりんさんが帰ってきたのか」と思って内心喜ぶ。
ところが、金田一がその晩に宿泊した『井筒』の女将によると
おりんは去年死んだとのこと!
では、金田一が千人峠ですれ違った老婆は誰なのか?
放庵のことが心配になった金田一は、急いで放庵の家へ。
しかし放庵はいなかった。
残されていたのは……
・ろうそく(夕べは停電があった)。
・尻切れ草履の跡(老婆がここに来たことは間違いない)。
・お庄屋殺しと呼ばれる“沢ギキョウ”の毒が入った吐血の跡。
・水瓶の上にはその“沢ギキョウ”の花が数本、水瓶の中には山椒魚が泳いでいた。
この様子から、ゆうべ酒盛りがあったことは間違いない。
放庵は、偽おりんと酒を酌み交わした後に毒殺されたのか?
それにしても、山椒魚がいるのは何故?
どちらにしても、家の外の痕跡は昨夜の大雨で全て流されてしまった。
その後、おりんの姿を見た者は誰もいない。
ここでもう一つの疑問が持ち上がる。
天涯孤独で世捨て人だった放庵の生活費は、どこから出ていたのだろうか?
数年前までは神戸の甥から仕送りがあったようだが、今はそれも途絶えているのだ。
村の誰かが放庵に貢いでいたのか?
続いて驚愕の事実が判明!
金田一が放庵から見せられたおりんからの手紙が部屋からみつかったのだが、その手紙の消印は今年ではなくもっと前の物だったのだ。
どうして昔に書かれたおりんの手紙が、今年放庵に届いたのか?
放庵の一人二役?
その後、村からおりんが出て行った姿を見た者は誰もいない。
そして放庵は、依然行方不明。
これを踏まえて、金田一は以下の“仮説”を立てる。
その後、おりんが確かに死亡していることが判明。
おりんの最期をみとった町田は、放庵あてにおりんの死亡通知も出していた。
放庵は、その死亡通知を受け取っていなかったのか?
磯川警部は、法庵の失踪事件と23年前の事件が関係があるとみて、亀の湯の娯楽室に捜査本部を設置。
金田一耕助も、磯川に同意した。
第一の殺人
その夜、帰郷した大空ゆかりの歓迎会が行われた。
ゆかりに会うためにお幹(木南晴夏)と一緒に会場へ向かった里子は、泰子が腰の曲がった老婆と歩いているのを目撃。
その翌朝、泰子が滝壺で遺体となって見つかる。
しかし泰子は溺死ではなく、絞殺だった。
遺体には奇妙な細工がされていて、枡(ます)にたまった滝の水が遺体の口にささった漏斗(じょうご)に流れ込んでいた。
犯人は何のためにこんな惨いことをしたのか?
泰子の遺体を発見したのは、彼女の恋人・歌名雄だった。
歌名雄はすっかりいつもの落ち着きをなくし、取り乱している。
ふと金田一は、桝と漏斗にマークが入っていることに気付く。
それは、仁礼家(屋号が枡屋/ますや)のマークだった。
つまりこの桝と漏斗は仁礼家が所有するブドウ酒工場で使われている物なのだが、誰でも運び出そうとすれば運べるらしい。
ちなみにこのブドウ酒工場の工場長は、今を時めく大空ゆかりの叔父・ 辰蔵。
辰蔵は、昨日桝と漏斗を持ち去ったであろう黒い人影を目撃していた。
泰子の母・敦子(斉藤由貴)がやってきて、みんなの前で仁礼嘉平を問い詰めた。
嘉平:「なんでわしが泰ちゃんを」
敦子:「あんたが泰を邪魔にしとるんは知ってました」
嘉平:「いや、わしじゃない」
敦子は「ああ、そう」と言って帰っていった。
弱みを見せるのが嫌いな性分で、娘を失った悲しみをありのままに表現することさえできない性質なのだ。
その後歌名雄が、みんなが止めるのも聞かず、滝から泰子の遺体を抱きかかえて持ってきた。
歌名雄は、泰子を失った悲しみに暮れた。
里子が頭巾を脱ぐ
その夜、由良家では泰子の通夜が行われた。
金田一と磯川警部は、通夜の客に対して泰子の死について“聞き取り”を始めた。
そこへ現れた里子は、なぜか頭巾を取って赤痣を堂々とさらしていた!
リカは「あら、まあ!里子!」と悲痛な声をあげた。
里子は、夕べ泰子が腰の曲がった老婆と一緒にいたことを話した。
里子は、その老婆に見覚えはないという。
リカは、自分が歌名雄の嫁として泰子か文子か迷っていたことを明かし、放庵(通称・お庄屋)はどこか得体のしれない怖い人だったと言った。
放庵が、村の人々の秘密を握っていたからだ。
青池源次郎の過去
リカは、亡くなった夫・源次郎についても語った。
・そこで青柳史郎の芸名で、活動弁士をやっていた。
・主任弁士にまでなったが、トーキー(無声映画に対して発声映画)攻勢に押されて失業。
・やむなく親の『亀の湯』を継ぐほかなくなって、帰郷。
リカは目に涙をためて「ウチの人はトーキーに殺されたようなもんです」と言った。
源次郎は一足先に満州に行って、後からリカと歌名雄を呼び寄せるつもりだったとのこと。
放庵からの手紙
泰子の机の上から以下の内容の手紙が見つかった。
あなたのお父さんのお亡くなりになったときの秘密について知りたいと思ったら、今夜九時、桜のお大師さんの裏側へおいで下さい。重大な秘密を教えてあげます。
放庵
右手が不自由な放庵が、こんな手紙を書けたのだろうか?
そして奇怪な老婆に化けて、泰子を殺したのだろうか?
由良敦子の話
金田一と磯川警部は、由良敦子から驚愕の事実を聞く。
・体面を取り繕うため、文子は嘉平の娘として育てられた。
・咲江は、何食わぬ顔をして鳥取に嫁に行った。
なんでも敦子は、この話をお庄屋こと放庵から聞いたとのこと。
この話が真実なら、ゆかりと文子は恩田の娘で異母姉妹ということになる!
敦子が滝つぼで嘉平を問い詰めた理由は、嘉平が娘の文子の結婚を焦る理由を知っていたからだったのだ。
時を同じくして、由良家の土蔵に腰が曲がった老婆の影がうつり、大騒ぎになっていた。
日下部是哉の話
金田一と磯川は、大空ゆかりのマネージャー・日下部是哉(岡田義徳)にも“聞き取り”をした。
日下部是哉は、春江(国生さゆり)との結婚を望んでいた。
しかし春江は、いまだに行方不明の恩田育三がひょっこり帰ってきたら?と思っていた。
恩田育三は、春江とのことを真剣に考えていて、一緒に満州に行くつもりだったとのこと。
日下部是哉は、恩田という人物が村の人々が言う“悪人”には思えないと言った。
磯川は、日下部=源次郎ではないか?と疑っていたが、
日下部には少しも関西訛りがないので、あきらかに源次郎ではない。
そこへ、今度は文子が行方不明だという知らせが入った。
第二の殺人
翌朝、文子の死体をぶどう酒工場で発見したのは飲んだくれの辰蔵だった。
文子の死因も、泰子と同じ絞殺だった。
うつぶせに倒れた文子の帯にさしこんであったのは竿秤で、その竿秤の皿の上に乗っかっていたのは縁起物のマユ玉。
さらに作り物の大判小判が、マユ玉に結わえられていた。
犯人はなぜまたこんないたずらをしたのか?
竿秤の竿の根元には、秤屋(仁礼家の屋号)のマークがあった。
嘉平によると、今朝庭にマユ玉がむしり取られた後の正月の縁起物の数々が散らばっていたという。
今回も、生きている文子を最後に目撃したのは里子だった。
里子は、仁礼家の門に入る文子を確かに見たという。
そうなると、文子は誰かに呼び出されて再び外出した折に、殺されたということになる。
悪魔の手毬唄
83歳の由良五百子が、金田一と磯川に鬼首村に古く伝わる手毬唄を聞かせたいと言ってきた。
聞いてみると、放庵(お庄屋)、泰子、文子がその手毬唄の歌詞になぞらえて殺されたことが判明。
すずめが三匹止まって
一羽のすずめの言うことにゃあ
あっちこっちでおしゃべり過ぎてお庄屋殺しで寝かされた
泰子
二番目のすずめの言うことにゃァ
女たれがよい桝屋の娘
桝ではかって漏斗でのんで
返された
文子
三番目のすずめの言うことにゃァ
女たてがよい秤屋の娘
大判小判を秤にかけて
返された
※「寝かされた」「返された」は「殺された」の意味
五百子は、放庵からこの手毬唄のことについて根掘り葉掘り聞かれたという。
その後、法庵が書いた「鬼首村手毬唄考」という考証的文章が「民間承伝」という雑誌に載ったとのこと。
金田一は、法庵の家に行って「民間承伝伝」を探すがどこにもない。
五百子によると法庵は雑誌に載ったことを自慢して回っていたそうなので、どこかに大事にしまっているはずなのに。
金田一は、手毬唄には「お庄屋バージョン」と「娘バージョン」があるのではないかと気付く。
つまり「すずめが三匹止まって」と歌うからには三匹目の娘の唄があるはず。
磯川は「それじゃ金田一さんは、ここにもう一人狙われている娘がいるとおっしゃるんですか!」と震え上がった。
金田一は「そうは言っていませんが、念のために三匹目の唄が知りたいんです」と言った。
しかし五百子は三番の歌詞を覚えていなかった。
文子の通夜でまたしても驚愕の事実が判明
この後、金田一と磯川は文子の通夜へ。
文子の実の母である咲江(有森也実)は、深い悲しみに暮れていた。
ここでまた驚愕の事実が判明。
嘉平が「実は、お庄屋(法庵)から泰子も恩田の娘だと聞いた。由良敦子はこの咲江と違って亭主がありながら恩田と醜い関係になったんじゃ」と言ったのだ。
そうすると、ゆかり、泰子、文子の3人は腹違いの姉妹ということになる!
嘉平がこの話を法庵に聞いたのは、嘉平が敦子といわゆる“ええ仲”だった時。
敦子は夫の卯太郎が亡くなった後、嘉平と不倫していたのだ。
嘉平の親からなんとか2人を別れさせてほしいと頼まれた放庵が、嘉平には「泰子が恩田の娘」と教え、敦子には「文子が恩田の娘」と教えたのだった。
ここで23年前の事件の時、源次郎の写真が一枚もなかった事実が判明。
その理由は、源次郎の両親が物堅い人間で、息子が活弁だったというのは外聞が悪いと言って、写真を一枚残らず破り捨てたから。
神戸女学院に通っていた咲江だが、青柳史郎(源次郎の芸名)に会ったことはないと言う。
嘉平いわく「この村の人間は活弁なんか相手にしない」とのこと。
つまり鬼首村の人間は、源次郎のことなど大して関心がなかったのだ。
磯川が恩田の身体的特徴について尋ねると、咲江は「足の中指が長かった」と証言。
磯川は顔色を変えた、なぜなら23年前の源次郎の死体の足の中指も長かったから。
恩田と源次郎の両方が足の中指が長かったとは考えにくいので、やはり23年前殺されたのは恩田だったのではないだろうか!
わからないのが、なぜ法庵とリカが2人そろって源次郎だと偽証したのか。
金田一は、法庵の「鬼首村手毬唄考」が載った「民間承伝」を探すために神戸へ。
金田一は「僕の留守中、ゆかりさんを犯人にわからないように警護してください」と磯川に言った。
手毬唄の三番の歌詞は「女たれがよい錠前屋の娘(=ゆかり)」と予想していたから。
第三の殺人
ところが、その夜に行方不明になったのは里子だった。
翌朝、里子の死体が発見された。
里子は、以下の3点で先の2人とは違っていた。
・死体が現場から少し移動させられていた。
・衣服がはぎとられていた。
・鍵と南京錠が落ちていた(鍵は狂っていて南京錠にはまらない)。
里子はズロースをはいただけの裸だったので、赤痣が生々しくむき出しにされていた。
犯人はなぜこのような残酷な侮辱を里子に与えたのだろうか?
生きている里子を最後に見たのは兄の歌名雄だった。
その時、里子は喪服を着ていたという。
これで放庵の生死はまだ不明にしても、
泰子、文子、里子と三晩つづけてものの見事に血祭にあげられたのである。
黒幕(犯人)の最期
ここで金田一が神戸から戻って来た。
戦利品は、三番目のすずめの唄。
錠前狂えば鍵合わぬ
鍵があわぬとて返された
犯人がなぜ三番目の犠牲者に里子を選んだのかは不明だが、次はやはりゆかり(=錠前屋の娘)が狙われるのではないだろうか?
磯川警部は、春江に頼んで里子の通夜の席で「明日東京に帰る」と嘘をついてもらった。
文子も里子も通夜の後に殺されたことから、犯人は通夜客の中にいるはず。
ゆかりが明日東京に帰ることを知った犯人は、今夜ゆかりを殺そうとするに違いない。
そこを一網打尽にしようとする作戦だ。
もちろん金田一耕助もこの作戦に大賛成した。
金田一たちが犯人の動向を見張っていると、なんとゆかり御殿が放火された。
犯人はこの家が厳重な監視下に置かれていたとは知らず、坂下のブドウ畑へ逃げ込んだ。
その後ろ姿を見た金田一は、千人峠で出会った老婆だと確信。
金田一と磯川警部が犯人を追いかけると、犯人は土手を転げ落ちて人食い沼の中に沈んでしまった。
犯人の引き揚げ作業が行われ、網にかけたのは歌名雄だった。
歌名雄が泥をはぐと、現れた顔はリカだった!!!
歌名雄は「ああ!母ちゃん!母ちゃん!」と絶叫。
最後の驚愕
リカは、人食い沼に投身自殺する前に農薬をしこたま飲んでいた。
覚悟を決めてのことだったのだ。
実は金田一は、以下の2点から泰子殺しの直後からリカが犯人だと目星を付けていた。
→犯人は辰蔵が桜部落へ下りていくと思い込み、桝と漏斗を滝壺へ置き去りにするという致命的ミスを犯した。
この事実から、犯人は桜部落より向こう側に住む放庵か『亀の湯』の人間。
➁泰子の通夜の晩に、里子が頭巾を取って痣をさらした。
→リカの泰子殺しに勘付いた里子は、母に自首してほしい思いから自らをさらけ出した。
里子は、リカが泰子を殺した理由は、自分が醜くかつ人目を気にしすぎるからだと思ったのではないか。
だから頭巾と取って自分は醜くとも幸せであるから、お母さんも不心得を起こさないでという気持ちだったのだろう。
金田一は、神戸で手に入れた源次郎の写真に眼鏡とちょび髭を書いた写真を3人の美魔女(敦子、咲江、春江)に見てもらった。
3人は「これは……恩田だわ!」と悲鳴を上げた。
そう、源次郎は恩田だったのである(一人二役を演じていた)。
つまり23年前の事件で死んだのは源次郎であり恩田だったというわけだ。
23年前の事件の真相
恩田育三(源次郎)なる人物がはじめて鬼首村に現れたのは、トーキー(音声映画)が軌道に乗って来て弁士の仕事がなくなりかけた時だった。
源次郎は、将来に備えて転職の必要に迫られていたが、亀の湯の息子であるという身分を隠して恩田の名前で生まれ故郷に帰ってきた。
その理由は、源次郎として帰ってきても誰も相手にしてくれないから。
ところが恩田として副業を村に持ち込むと、金持ちの由良家にチヤホヤされることに。
根強い劣等感にさいなまされていた恩田は、復讐心から由良敦子と仁礼家の令嬢・咲江に手を出した。
しかし源次郎の春江への愛情だけは本物だった。
源次郎はリカと歌名雄を亀の湯へ押し付けて、自分は春江と一緒に満州へ行こうとした。
このことを法庵(お庄屋)が嗅ぎ付けて、リカに告げ口。
その時お腹に里子を身ごもっていたリカは、源次郎が住むお庄屋の家の離れに乗り込んだ。
リカは「お腹の子供のためにも考え直して」と必死で源次郎を説得したが、源次郎は聞き入れなかった。
逆上したリカは源次郎を殺してしまった。
リカと法織が「恩田の詐欺を告発しようと乗り込んだ源次郎が、恩田に殺された」と証言したのは、法庵の入れ知恵だったのだ。
その後、法庵はリカに生活費の面倒を見てもらったのだろう。
もし恩田こと源次郎が、後に何も残さなければこの事件はここで終わっていた。
しかし恩田は、手を付けた3人の女性、そしてリカのお腹の中にも子供を残した。
この4人がそろいもそろって女の子だったことが、この事件を起こしたと言っても過言ではない。
黒幕(犯人)の動機と犯行の一部始終
黒幕(犯人)・リカの犯行動機は、以下の4つ。
・歌名雄が兄妹である泰子と結婚したいと言い出し、嘉平は同じく兄妹の文子を嫁にと言って来た。
・兄妹の結婚はどんなことがあっても阻止しなければならない。
・ゆかりの人気(自分の娘はあわれなのに、ゆかりは父親である源次郎の才能を受け継いで開花した)。
リカがいつ頃犯行を決意したかは不明だが、歌奈雄に泰子、文子との縁談が持ち上がり、ゆかりが“ゆかり御殿”を建てた時あたりに決意したのだろう。
そして今回のゆかりの帰郷を機に、殺人を実行したのだ。
リカは、法庵に全ての罪をなすりつけるため「鬼首村の手毬唄」を利用した。
・手毬唄の中に出て来る3人の娘が、自分のターゲットとドンピシャだったから。
・放庵は、芝居っ気もあり、途方もないことをやりそうなキャラクターだったから。
3人の娘の殺害を決意したリカは、まずは自分の秘密を握る放庵を血祭に上げることに。
リカが放庵を殺した一部始終は以下です。
➁手紙の消印に細工をして、手紙が最近来たように偽装した。
➂おりんに化けたリカは、金田一や村の人々にわざわざ挨拶をして、おりんであることをアピール。
➃放庵はおりんに化けたリカと酒盛りをしたわけだが、リカに気付かなかった理由は“鳥目(夜盲症)”だったから。
➄金田一が放庵の家で発見した“山椒魚(さんしょううお)”は、鳥目の特効薬だったのだ。
➅リカは放庵を“お庄屋殺し”で毒殺しようとしたが、放庵が苦しみ出したので絞殺。
➆荷車で墓地へ運んで、最近亡くなった女性の棺の中に一緒に入れた(放庵は小柄だった)。
➇その後大雨と停電が起こり、証拠は跡形もなく崩れた。
里子が殺された理由
それにしても、泰子、文子、里子の3人はなぜやすやすと連れ出されたのか?
それは泰子は「あなたのお父さんについて教えてあげます」という手紙をもらい、文子は「歌奈雄が待っています」という手紙をもらい、ゆかりは「恩田について教えてあげます」という手紙をもらったから。
最後に殺されたのがゆかりではなく里子だった理由は……
・リカはゆかりのバッグに手紙を入れたが、それに気づいた里子が「その手紙は私に来たものよ」と強引にゆかりから奪った。
・里子はゆかりの身代わりとしてリカに殺された。
・リカは、ゆかりとそっくりなドレス姿の里子の後ろ姿を見て、ゆかりと間違えて殺したのだ。
・里子が下着だけだった理由は、リカがドレスを持ち去ったから。
・リカは、里子がゆかりの身代わりに殺された事実を伏せようとしたのだ。
・リカは後から里子に着物を着せようと思ったが、間に合わなかった。
こうして金田一耕助によって、岡山県ならず日本全国を震撼させた、鬼首村の手毬唄殺人事件が解決された。
その上、23年前の源次郎殺人事件の真相まで解明されたのである。
ラストシーン
母・リカの罪を知った歌名雄は今にも自殺しそうな苦しみに駆られたが、ゆかりの一言で生きる希望を見出した。
「兄さん!あえて兄さんと呼ばせてもらいます!私は人殺しの子、詐欺師の子として生きてきましたが、歯を食いしばって生きてきました。女のあたしに出来たのですから立派な男子である兄さんにできないはずはありません!」
(1977年度版のドラマ、映画では、この後磯川警部が歌名雄を養子として引き取っている)
金田一は磯川に「警部さん、あなたはリカを愛しておられたのですね!」と言って、村を去った。
(FIN)
『悪魔の手毬唄2019』感想
日本中を震撼させた“鬼首村の手毬唄殺人事件”ですが、意外なことに犯人は悪魔ではありませんでした。黒幕である青池リカ(寺島しのぶ)は、ダメな夫・青池源次郎(渡辺大)を愛していたのに裏切られて逆上したせいで、最初の殺人を行ったに過ぎないのです。
つまり、始まりは激情による衝動的な殺人。
ここで、お庄屋という知恵者がリカに入れ知恵をしたせいで、話はややこしくなりました。
さらにリカに思いを寄せる刑事・磯川が、リカの心の重荷を下ろしてあげたい一心で真犯人(=リカ)を突き止めた結果、リカに自殺をさせてしまった……という結末もやりきれません。
1977年度版のドラマで金田一耕助(古谷一行)は「ボタンの掛け違えですよ。1つ間違えたら最後まで間違う」と言っていますが、まさにその通りでした。
リカは23年前の事件の真相を隠すためにお庄屋を殺さざるを得なかったし、息子の歌奈雄を守るためにも3人の娘を殺さざるを得なかったのです。
感受性が強く犠牲心の強い里子が、リカの犯罪に気が付いたことがさらなる悲劇を生んでしまいました。
愛する亭主と娘まで手にかけてしまったリカは人食い沼に身を投げましたが、これは誰も止められなかったと思います。
唯一の救いは、ゆかりが歌奈雄を励まして、歌奈雄が生きる決意をしたこと。
そして磯川のリカへの愛は本物で、歌奈雄を養子に引き取って自分の子として育てる決意をしたことは感動的でした。
ラストで金田一耕助が「あなた、リカさんを愛しておられたのですね!」と磯川に行ったのは、金田一も磯川の愛に感動したからだと思います。
それを証拠に、1977年度の映画版の金田一耕助(石坂浩二)は、必要経費以外の報酬を磯川から受け取りませんでしたから。